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症状別アドバイス集

その他の部屋・2008年

「結果ではなく過程を大切に」 '08.12

Lさんは仕事が無くなり暇になった事などからうつになり、空いた時間が苦痛で無理やり予定を入れてはいるものの、心はいつも焦っていて、何をやっても楽しめず、最近では結婚相手が見つからない事が頭から離れなくて困ってらっしゃるのですね。その後の書き込みなどを拝見しても、以前から「暇」が苦手だったのですね。何かに夢中になっていたり、熱中していたりしないと気が済まないということなのでしょうか。そして、その暇を埋める為に行っていたことが、今は無意味に感じていて、どんどんと周囲が結婚していったことも加わり、結婚へ焦るようになっているのでしょうか。

このような状態であれば、まずは、今通っている心療内科の主治医の先生と相談されることをお勧めします。というのも、うつ病の状態がひどい時は何か落ち着かず、ある特定の事にこだわってしまったり、何をしても楽しめなかったり、という症状が出て、このような場合はまずは薬の力を借りる必要があるからです。心のエネルギーが少ない時に行動しても空回りばかりとなり、余計に疲労を蓄積し、うつの悪循環をまねくことになります。

うつ自体はそこまで悪くなく、神経質の性格が問題なのであれば、「常に何かで満たされていないといけない」という考えが強すぎるのかもしれません。仕事がなく、他に満たすものは「結婚」しかない、結婚しさえすれば人生は充実するという考えにとらわれてしまったのかもしれませんね。しかし事実はどうでしょうか?「友人と食事をしたり、たまの旅行に行っている間だけは忘れてとても明るいので、自分がうつだといってもあまり信じてもらえません」とあります。ここにヒントがあるようです。「急がば回れ」というように、結婚だけに目を奪われず、おいしい店を探したり安価な旅行を計画するなど工夫を凝らして、日々の充実を図ってみてはいかがでしょう。
そもそも結婚は何かを埋める為にする事ではないはずで、Lさんもそのような結婚は望んでいないのではないでしょうか。おそらく、人とのつながりの延長線上に結婚はあるのだと思います。最初に結婚という「結果」があるのではなく、まずは人との付き合いという「過程」を大切にしていくことから始めてみてはいかがでしょうか。それは付き合う相手を尊重し、二人で共有する時間を大切に生かしていくということでもあります。「結婚に結びつくかどうか」という自分の考えにばかり耽らず、相手がほっとできる、楽しめるように心を配っていくことが大切です。
(谷井 一夫)

「感情」 '08.11

Tさん、こんにちは。ご自分自身の感情とのつきあいでお悩みのようですね。人間が生きていく上で、いかなるときも様々な感情が生じているものです。おそらく何も感じていない瞬間はないものと思われます。常に我々は何かを感じていることになります。こうした1つ1つの感情を人為でやりくりしようとする姿勢に無理があるのかもしれません。ではどうしたら良いのでしょうか。生きている主体である我々自身が感じる感情は、感情のままに感じるより他にありません。次が大事なのですが、その感情のおもむくままに衝動的に行動するのではなく、その感情を抱えた上で、我々自身が行動の方向性を決断していくことです。ここに主体性が表現されてきます。なかなか現実は難しいものですが、多いに感じ、多いに試行錯誤し、行動していきましょう。
(川上 正憲)

「ひきこもりからの脱出は?」 '08.10

Kさん、こんにちは。仕事を辞めて3か月になるが、今は自宅におられるのですね。いままでもいくつか仕事についたが、苦手な事があると不安で、休みの日も仕事が気になり、ゆっくり休めなかったとのこと、本当にお疲れ様。仕事とは責任を伴います。苦手なことがあれば不安になって当たり前です。責任感があるからそのように感じるのです。そのお気持でいいのです。
また、工夫や努力が嫌になって、仕事を放り出したこともあったが、家族、親戚、職場に理解があり、今まで生きてこられたとのこと、何よりです。周囲からの理解を得られるのは大変なことです。どうやってそのような理解が得られたのですか?悩まれておられるようですが、そういう中でも理解を得られるKirakiraさんの対人関係のありかたは、とてもいいように思われます。ぜひそのような関係を今後も持ち続けていただきたいと思います。

また、他人の評価が気になり、何かすると叱られるという恐怖がある、とのことですが、それは他人に認められたい気持ちが強いからです。その気持ちは重要です。他人の評価が全く気にならないようでは困ります。気になっていいのです。そのお気持ちを生かしていきましょう。叱られることが怖くていいのです。その分注意深く取り組んでいきましょう。
なお、仕事で注意を受けない人間はいません。時には叱られることも大切なことです。もし叱られることがあっても、次の参考にしようと思ってみてください。

なお、今は朝から漠然とした、社会復帰についての不安に襲われ、ぼーっとする、死にたい、面倒だし引き込もりたいという気持ちと、お父様の面倒を見て普通の社会人として生きていきたい思いがぶつかる、とのことですね。なるほど。不安はごもっともです。
これも、社会復帰をとても重要に考えておられるからこその不安なのです。それでいいのです。面倒だし引きこもりたい、これもわかります、社会生活が全く面倒に感じない人間はいませんから。Kさんは自分の気持ちに正直ですね。それは大切なことです。自分の気持ちにはっきり気づくことがそれを乗り越える第一歩だからです。そのような気持ちのなかで、普通の社会人として生きて行きたい思いがある、とてもいいことですね。その気持ちをぜひ忘れないでください。

ただ、普通の社会人として生きていくことは、3か月間自宅にいたあとでは、ちょっとハードルが高いかもしれません。ここは焦らないこと、Kさんのペースが重要です。まずは散歩や外出、あるいは家事の手伝いといった出来ることから手を出してみてはどうでしょうか。体を動かせば気分も変わります。また、いろいろな不安はKさんのやる気の裏返しです。その不安から、今後は何に注意するか、どのように行動するかを考える手掛かりとしてください。不安は役に立つのです。お父様の面倒が見られる社会人を目指し、一歩一歩取り組んでみてください。
(鹿島 直之)

「症状をなくすことを目標にしないとは?」 '08.09

Aさんが症状を治すことに行き詰っている様子です。「症状を治そうと思って行動しているうちは治らない」と聞いて、「治そうと思わないようにすべきなのか」と思案に暮れているのですね。

「治そうと思わないように」努めたとしたら、どうなるでしょうか?それも、自分の感情を頭の中で無理にやりくりしようとすることであって、かえって「治そうと思わない姿勢」にとらわれてしまうかも知れません。今はさしあたり、「治したい」と切に願っている、そういう心情のままでいて構いません。症状を治すために掃除を始めたとしても、丁寧に掃除をしていれば、今まで気がつかなかった汚れが気になったりしませんか?
そういうときに、どうすればよりきれいになるかと考え工夫をしてみましょう。もちろん掃除の目的はきれいにすることです。そして、目を皿のようにして部屋を見回しても、もうきれいにする余地がない、汚いところがなくなったなら、次の行動にさっさと移ってみましょう。このように、すっと行動を転換して、生活を充実させていくことです。いろいろなことにチャレンジしてみて下さい。そうすれば心はおのずから流れていくはずです。
(矢野 勝治)

「自分を労わる」 '08.07

Cさんは回転性のめまいで精神科にまで入院されたのですから、かなり辛い状態であったと察します。しかし、精神科での診断が神経症性うつ病であったならば、めまい以上に抑うつ症状が強く認められていたのでしょう。おそらく、精神科の担当医も、その点を重く見て、抗うつ剤などの処方を行ったのだと思います。その後、抑うつ症状は回復されましたか?抑うつ症状の回復にも関わらず、めまいや耳鳴りが続いているとすれば、一度は、耳鼻科疾患の有無を確認することをお薦めします。しかし、身体的に何ら問題がないとすれば、耳鳴りを強めている背景に、心理的要因が影響している可能性があります。

ところでCさんは、担当医の薦めで森田療法と出会いました。その中で、ご自身の性格が、森田療法で説いている神経質性格とかなり重なる部分が多いと感じていらっしゃるようですね。神経質性格の人々は、些細な心配や体の違和感でも「あってはならない」ととらえ、排除しようとする構えが人一倍強いのです。その結果、このような構えが、却って違和感などに対するとらわれを強め、症状を作り出していくのです。

もしかすると、Cさんの耳鳴りが回復しない理由の一つに、このような心理的な悪循環が関与しているのかもしれません。そうであるとすれば、耳鳴りを取り除くことに注いできたエネルギーを、日常の生活に向けていくことを是非心がけていってください。何故なら、回復の切っ掛けは、症状の除去にあるのではなく、日常生活の送り方にあると思うからです。
Cさんの最近の生活スタイルは如何ですか?
耳鳴りが解決しないばかりに、自暴自棄な生活に陥ってはいませんか?規則正しい睡眠、食事、ちょっとした運動など、自分の健康に配慮した生活を意識していきましょう。怖いと思い、一方的に止めてしまった服薬も再開してみる価値があるかもしれません。最初は、戸惑うことも多いかもしれません。しかし、Cさんの日常生活が少しでも豊かになることを願っています。
(樋之口 潤一郎)

「自分の悩みを出せないこと」 '08.06

Aさんは、「発見会に行っても症状、対人、とらわれ、劣等感などについて正直に話すことができません。自分の悩みが下らなく思え、仕事をしている方からすると、暇だからそんな事考えてるんだと思われそうだからです」と書かれています。

自分の悩みが小さいものに思え、また、それを話すことで更に傷ついてしまうのではないかとためらっておられるのですね。
悩みを話すことで、くだらないと思われてしまうのではないかと考えたり、拒絶されてしまうのではないかと思うと、足がすくむような思いがするもの。
臨床の現場でも「こんなことで傷ついて情けない」と悩んでいることでさらに傷ついている方によく出会います。
Aさんを含めてそうした方たちに伝えたいと思うのが、「つまらない悩み」などというものはないということです。
悩みは、その人にとって重要なことから生まれてくるものです。

悩みと向き合うことで、たとえば「人に受け入れられたい」と思うからこそ対人の悩みが生まれていること、「人に認められたい」と思うからこそ劣等感の悩みが生まれる、というように、ご自身の「生の欲望」が見えてきます。

むしろ、「つまらない悩み」とまとめてしまうことで、何に悩んでいるのか、何を求めているのか、が聞き手にも自分にもわからなくなってしまいます。悩みを打ち明けられないことには、「つまらないやつだと思われてはいけない」と意地になっている側面もあるかもしれませんね。森田先生も「つまらないことが気になって」とそそくさと話を切り上げようとする患者さんを引き止め、「『つまらぬこと』とか『苦しい』といわずに、なるたけ、具体的に言ってください」と、しつこいほどに聞いていますよ。

そして、その悩みを持つ自分で今、できることに向かうことで、むしろできることは広がっていきます。それは、悩みや弱さを抱えた自分に「なりきる」ことだからです。

一方で、森田療法では「不安や悩みを自分で抱える」ことも大切にしています。 つまり、人に「悩みのすべてをわかってもらう」のではなく、人の支えのもと、自分で不安を抱え、そのときの目の前のことに向かうのです。
一見正反対に見えることのようですが、弱い自分を認めそのままの自分をさらけだすことと、悩みを自分で抱えること、この二つのことを実行していくことで、できること、自分の世界が広がっていきます。
(塩路 理恵子)

「自分の心身と呼吸を合わせてみる」 '08.05

Yさんは、仕事を病欠したことを書き込まれ、無理をしすぎたのかもしれないと振り返られていました。実際書かれている内容を見てみると、雨の中雨具もつけずに仕事をしたり、肋骨を打って痛みがあるにもかかわらず休まず乗り切ったり・・・客観的にも相当な無理をされたようです。ご自身では、怪我や病気をしても立ち直りが早いと考えていたようですが、これでは身体が悲鳴をあげてしまいますね。今回の体調不良は、まさに身体からYさんへのサインだったのではないでしょうか。
メンタル部分でも、朝の抑うつ感が続いている様子。「仕事に就けばそれなりに何とかなるが、いつも仕事に追われてあたふたしている」と書かれているところを見ると、身体だけでなく、心の声にも耳を傾けないまま頑張り続けているのかもしれませんね。
きっと、責任感が強く、担った仕事はしっかりやろうとする真面目な方と推察します。それゆえ、回りからの信頼も厚く、仕事が忙しくなるのかもしれませんね。でも、ご自分の心身がダウンしてしまったら本も子もないことです。
ご自身も“完璧症”と書かれていますが、こうした性格の方は時に頑張るところがずれてしまい、自分の身体や心に厳しくなってしまいがちです。自分を大切に扱うことと、手を抜くことは全く別であるのに・・・。きっと頭ではわかっているけど、いざとなるとなかなかその加減が難しいのでしょうね。
ちょっと、犬の散歩を思い浮かべてみてください。犬は喜んで我先にと走ろうとするかもしれません。あるいは、外の刺激にあちこち関心を向けて、なかなか進んでくれないかもしれません。そんな時、貴方ならどうするでしょう?強引に自分のペースで犬を引きずり回すでしょうか?勿論、勢い込んで走ろうとした時には、それなりにリードを引いてスピードを抑えるでしょうし、あちこちよそ見をしている時には、軽く合図を送って先を促すでしょう。しかしそれは、決して強引にやるのではなく、相手(犬)の反応を見ながら行うはずです。言い換えれば、無理なくメッセージを伝え、呼吸を合わせるということでしょう。
自分の身体や心もこれと同じではないでしょうか?自分のこととなると、どうしてもわかっているつもりになったり、自分の思い通りに動かそうとしてしまうものです。しかし、たとえ自分の身体や心であっても、呼吸を合わせてこそ、スムースに動くものなのです。
自分の身体が今どんな状態なのか?自分の心は今何を感じているのか?自分自身に問いかけて、そして身体や心が発するメッセージに耳を傾けてみましょう。すぐにはわからなくても、一瞬立ち止まって呼吸を合わせようとするだけでも違うはずです。がむしゃらに頑張るのではなく、自分の身体や心を、良きパートナーと考えてみませんか?
(久保田幹子)

「マイナス思考と闘わない方法」 '08.04

Mさんは書きました。「落ち込みやすく、マイナス思考を変えたい」と。たしかに、うつ病になりやすい方は日ごろからいわゆるマイナス思考に向かいやすい傾向があるようです。たとえば、何か困難な問題が生じたとき、うつ病になりやすい人は、客観的に見てその人の責任である以上に「自分のせいだ」と受け止めやすいことが指摘されています。世の中には、反対に自分の責任を一切省みることなく、「周囲が悪いからこうなった」というふうに、他人や環境のせいにしてしまう人もおり、なるほどこういう人はうつ病にはなりにくいものです(ただしトラブルメーカーとして、周囲の人々が困ることになります)。ちなみに最もストレスに抵抗力のある人は、客観的なその人の責任よりも少しだけ、周囲のせいだと考える傾向の人だといわれています。またうつ病親和的な人には、神経質な人と同様に完全主義的な傾向があります。たとえば試験で80点を取ったとき、完全主義者は「20点も間違えてしまった」と思って挫折感を抱くでしょう。しかし60点取れば十分だと考える楽天的な人なら、80点の成績は御の字だということになるでしょう(しかし完全主義者と楽天主義者のどちらが落第しやすいかといえば、答えは明らかですね)。
このように、マイナス思考といわれるような傾向は、別の角度から見れば責任感が強く、着実に結果を出そうとする姿勢ともいえますので、無理やりマイナス思考をプラス思考に変えようとしなくてもいいのです(トラブルメーカーを目指したり落第スレスレのスリルを求めなくてもいいということです)。ただ、時としてこうした傾向が自分を追い詰めてしまうという点は自覚して、日ごろから自分や周囲のプラス・マイナス両面を見るように心がけ、バランスを取り直していくことが大切です。マイナスからプラスへ、ではなく、中庸の姿勢ということですね。
さて、より問題になるのは、うつ病が始まり気分がうつに傾いてくると、マイナス思考が勢いづいて、悲観的・自責的な考えが力を振るうようになるということです。アロン・ベックという米国の精神医学者はうつ病の際のこうしたマイナス思考を指して「自己や環境、将来に対する特有な認知(物の見方)の歪み」と表現しました。このような物の見方、考え方をより客観的で合理的な見方に修正する方法も提唱されていますが、ともすると頭だけのやりくりになってしまうことがありますので、ここではもう少し森田療法的な対処の仕方を考えてみましょう。まず大切なことは、こうしたマイナス思考に気づくことです。気分が沈んだり自責感がつのったときに、どんなマイナス思考が影響しているのかを自覚することです。そして、それに気づいたら、こうしたマイナス思考をまともに相手にせず、空の雲と同様に頭上に浮かべたまま、いま目前のこと、手元の仕事に向かっていくことです。時間が経てば、いつの間にかそうした考えが流れ去っていくということに気づけばしめたもの。要するに、否定的な考えと闘うのではなく、あるがままに放任するという姿勢がポイントです。
(中村 敬)

「うつ病に対する森田療法」 '08.03

Bさん、うつ病で休職して二年で、一年以内に復職しないとという現状、さぞかしおつらいと思います。

ここでも再三取り上げられておりますが、うつ病の初期治療は原則薬物療法と休息です。ところがこれだけでは回復されない方もいらっしゃいます。
まず職場に持続的なストレスがおありでしょうか?うつ病の社会復帰は原則元の職場へ戻ることですが、もし元の職場が持続的なストレス要因であるのであれば、できれば環境調整(配置転換)をしてもらうことも一つの方法かもしれません。
配置転換などの環境調整でもなかなかうつ病が長引いてしまう要因に性格要因が挙げられます。例えば、几帳面、完璧主義で「こうあらなければ」との構えが強い人です。服飾前と同じように仕事を万全にやらないといけないとあせって無理をし、うつが再発してしまうこともあります。社会復帰していきなりふだんどおり働こうとするのは、傷を手術して表面のみがくっついていても中がまだ回復していない状態で動くようなものです。

また、社会生活へ戻っていくときいきなり9時から5時まで働かない方がよいです。最初は形式上休職中にしておき、まず職場の雰囲気に慣れることぐらいから始めましょう。また仕事量も一ヶ月間は半日勤務あるいは隔日出勤くらいからスタートする方が無難でしょう。これで一ヶ月ほど慣れてから定時勤務へ切り替えていきます。定時勤務へ戻しても残業はすぐにやらないほうがよろしいでしょう。

これはうつ病が回復したらですが、うつ病に陥った状況を振り返ってみることも大事です。これを知ることにより今後の再発予防につながるからです。また、うつ病になったことにより今までの生活スタイルや過ごし方を振り返ることも重要です。仕事だけに生活が偏っていませんか?仕事だけでなくご自身の好きなことをする時間や家族との過ごす時間を含めて見直してみましょう。うつ病を治すだけでなく人生をどう生きていくかを振り返って見てください。
(舘野 歩)

「等身大の“かくある現実”をみつめること」 '08.02

Rさん、こんにちは。夜遊びの多い息子さんのことに悩まれ、「ひきこもりの会」に参加されたようですね。そうした「ひきこもりの会」への参加後から、なかなか話をすることが難しかった息子さんと会話が出来るようになったとのこと。良かったですね。
そして、注意もしていないのに夜遊びも行かないようになり、息子さんから「遅刻せずに学校に行くようにする」との言葉があったとのこと。様々なことを「ひきこもりの会」で学ばれたのでしょうが、Rさん自身の息子さんに対する態度の変化が大きなポイントにあるように思われます。これまでの叱咤激励、注意を中心とした対応をやめて、まずはだまって見守り、息子さんがいつでも安心していられる家庭であるように腐心されたとのこと。
言わば、Rさんの規範に基づいた「息子はかくあるべし」という行動ではなく、等身大の「かくある息子」を見守り、サポートしようとした結果であるように思われます。こうした等身大の「かくある現実」を見つめたからこそ、自然な交流が生まれたのでしょう。
「かくあるべし」という規範意識で「かくある現実」に臨むとそこには、自ずから苦痛と無理が生じます。「かくある現実」をあるがままに認めることは、自分自身の感情との付き合いかたにおいても、家庭、社会における人間と人間の交流においても大変、有用と思われます。
(川上 正憲)

「森田療法の薬物の考え方」 '08.01

Oさんは「出来れば薬を飲みたくない」と考えてしまうとのことです。患者さんの中には、薬を使わない治療法に森田療法があると聞いて来院される方がいらっしゃいます。森田正馬の時代には薬が原則用いられなかったことが関係しているものと思います。

森田療法における薬の考え方で大切なことは、薬を使うか否かということよりもどのような位置づけで薬を用いるかということです。うつ病の治療には森田療法においても薬を主に用います。不安障害の治療においては、患者さん自身の治療的取り組みこそが回復につながるのであって、薬物はそれを効果的に引き出し生活を立て直すための補助手段であると考えます。

また、患者さんを診ていますと、治療がすすむなかで「仕事や家事などを行っていて薬を飲むのを忘れましたが、飲んでいる時と変わりなく生活が出来ています。そのため減らしたまま続けてみようと思います。」と話されて、薬が減っていく方が意外に多いように思います。症状をなくそうとするのでなく症状ありながら取り組んでいくのと同じように、薬もなくそうとするのでなく生活の立て直しに目を向けていくことが大事だと言えます。一方で、どうしても薬を減量できなければ、入院治療において減量する(中止する)という方法もあります。
(矢野 勝治)

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