Rさんは潔癖症と被害妄想で悩まれていて、そしてこういった症状を和らげ、付き合い方を学びたいと考えていらっしゃるのですね。潔癖の症状としては、何度も手を洗うこと、手洗いに時間がかかること、そしてその決められた洗い方をしないと洗えていない感覚になるという状況のようです。確かに汚いと思うと不快な気持ちになりますし、それを身につけたまま生きることは苦痛がともないますね。それも自然な感情だと思います。一方で、今は不快な気持ちをなんとかするために、時間や労力をかけてやりくりをしている状況なのだろうと想像いたします。症状を緩和したいとおっしゃっていることから、Rさんご自身もどうにかしたいと思いつつ、どうにもできないことに行き詰っているのではないでしょうか。それはとても苦しく、疲弊もしますね。
Rさんが、ここまで汚れを気にするのはなぜなのでしょうか。想像するに、それは安心安全な生活を求めているからこその裏返しなのではないでしょうか。安心を求めれば、当然安心を脅かす存在が気になりますから、それらは表裏一体の関係といえそうです。しかし、安心安全を求めてやっている行動が自分を疲弊させ、大事な時間と労力を奪っているとしたら、それはとてももったいないことですし、それこそ自分自身納得がいかないのではないでしょうか。
ところで、Rさんは手を洗う際に何を基準に切り上げていますか?ご自身で “決められた洗い方をしないと洗えていない感覚になる” と表現されているように、手洗いの目的が、気分がすっきりするかしないか、自分が納得するかしないか、ということになっていないでしょうか。もしそうだとするならば、本当に汚れているのか、汚れているような気がするのか、ということを一度分けてみるのも方法かもしれません。実際の汚れには対処が必要です。それは自分を守ることにもつながりますよね。一方で、“気がする汚れ” であれば、たとえ気持ちがすっきりしなくても、そのままにしていればいずれ時間が気分を流してくれるはずです。
誰かから危害を加えられていると考え、音、言動、仕草などが自分に向けられていると思い込んでしまうという悩みも、やはり安心安全を求めるからこその裏返し。こちらも事実なのか、気分なのかを分けてみてもいいのかもしれません。
付き合い方を学びたいというRさんの気持ちは大切に、まずはその足掛かりとして、気分か事実か分けてみてはいかがでしょうか。気分をすっきりさせることに使っていた時間と労力は、自分の生活を充実させる方向に注いでいただきたいと思います。手洗いの納得感ではなく、自分がどのような生活を送ればより納得できるのかという視点も大事にしていただきたいと思います。
Rさん、応援しております。
(渡辺志帆)
Aさんは「対人恐怖と慢性的なうつ状態で悩んでいます」と書き込まれています。幼いころから引っ込み思案で内向的で緊張しやすかった一方でお母様の影響もあり、「明るく積極的に変わらなければダメだ」と思ってきたとのこと。
「人の思惑が怖くて目的本位の行動が全くできません」と書かれる一方で「プライドだけは高く、人に哀れに思われたのではないかと思うと、いつも惨めな気持ちになります」別のところでは「人にガッカリされることがものすごく怖いのです。どうしたら楽になるのか・・どうしたら対人恐怖を克服して人と自然体で付き合うことができるのでしょうか」多くの同じ悩みを持ってきた先輩たちが共感しアドバイスを贈っています。その中で「弱くなりきる」ということが話題になっていました。ここではそのことを取り上げたいと思います。
森田先生はいろいろな場面で「なりきる」という言葉を使っています。その中に「弱くなりきる」があります。「弱くなりきる」ことについて森田先生は、劣等感を持ちやすい神経質の人は、虚勢を張ったり自分の心に反抗せず、それをそのまま肯定すれば容易にできることなのだと言います。森田先生が言うには(現代風の表現に改めています)、
自助グループでの自己紹介のときでも言いたいことの十分の一も言えない。それならそれで満足し安心できるかというと、そうはいかない。残念でならない。ただ自分が弱いからしかたがないまでのことである。このままあきらめることはできない。ひと晩ふた晩眠れないこともある。尻尾を巻くのがすなわち恐怖である。残念で、あきらめられないというのが、欲望である。その恐怖を否定したり、あるいは欲望を捨てようとかなかったことにしようとするのではどこか偽りがあり、とらわれることになる
ということです。
「尻尾を巻いて引っ込むという恐怖と、どうも惜しいという欲望が両方から張りきっているところに、初めて本当の修養があるのである」とも書かれています。
大切なのは、どちらも否定したり、ないものとして扱ったりしない、ということです。
Aさんは、「人にガッカリされるのが怖い」という恐怖と、「よく思われたい」という欲望の両方がとても強いのだと思います。なんとか自分を変えたい、と奮闘してきた様子も伝わってきます。そして悩みながらも二人のお子さんを育ててきているというのは大変なことだと思います。せっかくの頑張っている「事実」を「恐怖」で塗りこめないようにしましょう。森田先生は別のところでは、虎の穴に入るにも大胆に平気になるのではなく、ビクビクしながら行く、という表現もされています。
先輩方が書いているように、ビクビクしながら手を付けて、少しずつでも出来たことに目を向けていってください。
(塩路理恵子)
Rさんは幼い頃から人と話すときに緊張しやすく、人間関係を築くことが苦手で、社会人になってからもコミュニケーションがうまくとれずに転職を繰り返されていました。また、どうしても他者の顔色や周りの反応ばかり気にして、他の人と比べて劣等感を感じてしまうということです。そして、Rさんはご結婚され、これから子供ができて、今の状態のままで母親になることを恐れていました。また、友達が少ないことや人間関係が乏しいことを劣等感に感じて、うまくやろうと頑張るものの、疲れて、時には「一人でも良いのでは」と思いながらも、一人の時間が長くなると苦しくなり、さらに、友達と会っても「嫌われたくない、また会いたいと思って欲しい」という気持ちが強くあまり楽しめないということです。Rさんの理想は「自然に楽しく人と繋がり、人に囲まれながら幸せに暮らす」ということですが、何から取り組んでよいのか分からなくなってしまうこともあり、フォーラムに参加されました。
Rさんはフォーラムに参加された当初は症状から視野が狭くなっていたようですが、少しずつ視野が広がり、「今自分が出来ることや今いる人たちを大切にすること」などが見えていなかったと気づき、家事や勉強、映画や読書などの好きなことをやって、日常生活を充実させていこうと考えていらっしゃいます。「今自分が出来ることや今いる人を大切にすること」、とても大切な点に気づかれていて素晴らしいと思います。
Rさんはご結婚され、妻となり、今後母親になることを想定して、今の対人恐怖があるままでは、うまくいかないのではないか、と心配されたのだろうと思います。今の状態ではこの先うまくやっていけないのではないか、という不安を「適応不安」といいます。この適応不安は環境の変化などがあったときには出やすいものです。ただ、一方で、この適応不安は「うまくやっていきたい」という大切な欲求があるからこそのものともいえます。Rさんは妻として、母親として「うまくやっていきたい」という思いがあるからこそ、不安も強くなったのではないでしょうか。このように、不安の裏側には大切な欲求があり、両方ともに、とても自然な感情で、無くせるものではないものだと思います。しかし、こんなことで「不安になってはいけない」とか、「この不安を克服しなくてはいけない」と身構えて、この不安を無くそうとするとますます不安にとらわれて、身動きできなくなってしまうものです。
ですから、Rさんがお気付きのように、先々の不安(適応不安)は棚上げして、今出来ること、にエネルギーを向けていくことが良いと思います。今出来ること、家事・仕事・ボランティア・勉強・映画や読書などの趣味、そして、今周りにいる人たちを大切にすること、Rさんには色々とあるようですね。このことを忘れずに今の生活を少しずつ充実させていってくださいね。応援しています。
(谷井一夫)
Sさんは人からどう見られるかが怖く、また他人が自分を貶めようとしてきたらどうしようと想像し不安になることもあるとのことです。それだけいろいろ気になるとすると、怖さも大きいでしょうし、人と接する時も大変エネルギーを使うでしょう。
そんな中でバイトをしたいと考えられているのはとても大きなことですね。ちなみに、バイトを始めたいのはどうしてですか?バイトを通じて症状を克服したいのでしょうか。それとも必要なお金があったり、ある職域で経験を積みたいなど他に何か理由があるのでしょうか。
バイトを見つけて収入を得るのが目標だとすると、自分の得意なことを活かして、まずは対人接触の少ないところから少しずつ始めていくのもよいかと思います。人間関係や信頼は仕事を通して長い時間をかけて培われていくものです。Sさんの強みや得意なことはどんなことですか。得意なことというのは、特技や技能だけではなく、力が強いとか、一つ一つこまごまとしたことをやるのが好きとか、丁寧さといった身体面や性格面での特徴や好みも含んでのことです。どんなことだったら仕事の内容として自分にとってやりやすいか、どういうバイト先だったら自分に良さそうかを考えてみてください。期間も短いものから始めるのもよいかもしれません。
履歴書の作成、申し込み、面接などアルバイトを始めるまでのステップも対人場面を含みますね。アルバイト採用者との対応でも、「もしかしたら(相手は○○と考えているんじゃないか等)」の不安が生じるかもしれませんが、「もしかしたらの不安」と目の前に実際に起きている事実を分けて、「もしかしたら」の不安はいったん棚上げにして、先方から送られてきた内容や実際に言われたことなど事実に目をやるようにして進めてください。
具体的なステップは小さく、少しずつ進めて、できた自分を褒めて励ましながら進めてください。戸惑うことや疑問に思うことがあったら、体験フォーラムの場をどんどん活用してください。応援しています。
(矢野勝治)