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症状別アドバイス集

強迫神経症の部屋

「症状から見える持ち味について」 '21.4 

はじめまして、Tさん。文面を拝見する限り、Tさんは自分の行為が他者に危害を与え、「重大なことになってやしないか」という強迫観念に悩まされているのでしょう。馬鹿々々しいと感じながらも、その観念が心の中に差し迫ってくる様子を踏まえると、Tさんは強迫性障害であると考えられます。

このような強迫観念は、かなり侵襲的であるため、多くの患者さんは受け入れることができません。その結果、その症状を打ち消し、安心を得ようと様々な行動を試みます。その代表的なものが、確認行動や洗浄行為などです。しかし、その行為が繰り返されるほど、症状へのとらわれを生み出すこととなってしまいます。

Tさんは、現在できる対処を色々試みた訳ですが、一連の努力によって回復していないとすれば、その奮闘もやはり症状を打ち消す行為だった可能性があります。しかし、落ち込む必要はありません。友人知人に相談されたこと、プロのサポートを得ようとした試みなど、必死に取り組んだ事実は、回復を求めた「生の欲望:以下欲求」の表れと私は考えます。つまり、この欲求を、症状排斥のためだけに消耗せず、森田療法で言われるところの「より良く生きる」という姿勢に還元していけばよいのです。

では、どのようにしていくと良いでしょうか? 私はTさんの「他者に危害を与え、迷惑をかけるのではないか」という加害恐怖にこそ、回復の糸口があるのではと考えます。そのため次の二点を心がけていただければと思います。

一つは、強迫観念は自然発生的な不安や恐怖と同様に捉えていく必要があります。つまり、先人の森田療法家が述べているように、意志の力ではコントロールできないのです。それは、我々が嵐に向かって「早く消えて晴れになれ」と言っているようなものです。そうだとすれば、症状を放って自然に消退するのを待つという姿勢が欠かせません。早く対策を打ち立てることだけが回復ではないのです。

その際、私は、患者さん達に「不安は悪者ではない。堂々と不安を感じて良い!!」と保障するように心がけています。多少の確認行動もあって構いません。しかし、この視点だけでは、単なる症状に対する我慢比べになってしまいます。そこで二つ目の視点が重要となります。それは症状以外の生活世界にどのように関わるかということです。

私は、Tさんの加害恐怖には単に症状という意味だけでなく、Tさんならではの優しさの表れとも捉えています。その持ち味を目の前の生活場面に如何に発揮するかが求められるのです。それは目の前の生活場面の取り組みに対し、誠実かつ細やかに取り組むことを意味します。そのため、症状に苦しみつつも、日常生活で手と足を積極的に使いながら、様々な作業に関わっていくように心がけていきましょう。

例えば、スーパーで買い物をしている際、「自分が周囲の人に触れ、けがをさせたのでは」と強迫観念に駆られたとします。勿論、そこで振り返るなどの確認行為があったとしても、最終的には今日の夜に必要な食材に思いを巡らし、色々な品物を手に取りながら吟味し買い物を終えていくよう意識することです。そこにTさんの細やかさを生かしていけば、選ばれた食材たちもきっと喜んでくれると思います。そして、持ち味を生かしながら生活感覚を養っていくことは、症状へのとらわれに風穴をあけることでもあるのです。それこそ、Tさんの回復を表しています。

今は苦しみの渦中でしょうが、時間を掛けながら、是非Tさんの持ち味が実生活に更に発揮されることを願っています。
(樋之口潤一郎)

「子供を傷つけるのではないかという強迫観念」 '21.3 

Aさんは、「生後5ヶ月の娘への加害恐怖に苦しんでいます。」と書き込んでおられます。

赤ちゃんはあまりに非力で、私が少しでもその気になったら簡単に傷つけてしまえることが恐ろしくて仕方ないです」とも書かれています。本当にその通りで、子供、赤ちゃんはか弱くて、だからこそお世話も必要で、「傷つけてはいけない」さらに「傷つけてしまったらどうしよう」という観念も浮かぶのでしょう。加害恐怖に悩む人は道徳心が強い(時に強すぎる)人が多いとも言われます。

同じように我が子に対する加害的な強迫観念に悩むKさんは、想像してみたら本当にそうしたいと思っているかのようにさえ思えて、「自分の本心がわからない」と苦しい胸の内を打ち明けておられます。こんな恐ろしいイメージは苦しい、浮かばないでほしい、と思われていることでしょう。

ただ、森田療法では浮かんでくること、感情には価値判断をしない、ということを大切にしています。そして「本当の気持ち」というのは理知でもって探るほどに藪の中に迷い込んでしまいますし、ましてや自分の気持ちを試したりコントロールしようとすればなおさらです。

Aさんの書く「本当なら可愛くて仕方ないはず」というのも、実際には不安な自分の気持ちに「かくあるべし」をあてはめてしまっているかもしれません。森田先生流の喩えでいえば、「胃腸の調子が悪いけど有名店のお菓子だから美味しく感じなくちゃ」というようなもの。感じ方というのもその時その時の様々な要因で変化するもので、やはりそれには無理がありますよね。「可愛く感じることは少し先の自分に預けておく」というようなイメージでもよいと思います。

そして「森田療法のことを知り、自分なりに恐ろしい気分のままでやるべきお世話はやっていますが」とのこと。頑張っておられますね。少しずつでも、お世話をしたときの、娘さんの様子に目を向けていきましょう。娘さんはお世話にその都度いろいろな反応をしているはず。そして、「1週間前、1か月前とこんなに違う」とびっくりするときが来ると思います。
(塩路理恵子)

「一人で悩まず、精神科の医師にご相談ください」 '21.2 

Sさんは、考えていることを頭の中で何度も確認しないと気が済まない、文章を読む時に同じ箇所を何度も読み上げないと気が済まないという強迫症状でお悩みとのことです。一般に、強迫性障害には、強迫観念のみにとどまるタイプと、強迫観念に伴う不安を解消したり打ち消すための強迫行為を伴っているタイプがあります。Sさんの場合は後者のようですね。

また、二つ目に、自分の意思とは関係なしに、頭の中に考え事が浮かんできて行動できなくなるお悩みがあるとのことです。このような心の状態は、周囲の人達からはなかなか理解してもらえず、たいへんにお辛い状態とお察しします。Sさんは、精神科や心療内科に通院されていますでしょうか?

もし、自分が自分であるという感覚が変わってきていたり、思考力全般にも影響が出ている状況でしたら、森田療法に取り組む前に、医師の診断のもと、適切なお薬の治療を受けることをお勧めします。お薬は人の考えや性格を変えてしまうことはなく、症状を緩和してくれる働きがあります。ある程度症状が改善し落ち着いた状態になってから、ゆっくりとご自身の生き方を模索されたらよいと思います。

あまりよいアドバイスができず恐縮ですが、お一人で悩まず、専門の先生に今一度ご自身のお悩みを伝え、最適な治療を受けられることをお勧め致します。
(鈴木優一)

「強迫観念は想像上の不安→本来の願望に目をむけよう」 '21.1 

Rさんは、長らく強迫症に悩まれており、子どもにひどいことを言ってしまうかもしれない、傷つけてしまうような言葉や行動を起こしてしまうかもしれないという不安が頭に出てきて、時に子供と接することが怖くなってしまうと書き込まれていました。

日々の子育ての過程で、お子さんを自ら傷つけてしまうという考えに苛まれることは、とても不安になると思いますし、何よりお子さんとの関わりに躊躇してしまう状況は辛いことと思います。

ではどうして、ご自身の大切なお子さんをあえて傷つけてしまうのではないか・・・といった考え・不安が浮かんでしまうのでしょう?これまでも、この体験フォーラムで多くの先生方が解説していると思いますが、森田療法では、不安は自然な感情と理解します。それは、不安が「より良く生きたい」という欲求の裏返しと考えるためです。Rさんの場合も、お子さんを大事に育てたい、傷つけたくないという気持ちが非常に強いからこそ、逆に傷つけるようなことをしてしまうのではないか・・・と不安に思うのです。つまり、不安はお子さんをとても大切に思っている証ですね。ただ、あまりにその気持ちが強いので、少しの不安がよぎることも受け入れ難く、逆にあえて自分がそうしてしまうのではないか・・・と、自分の態度や行動、何より自分自身のお子さんへの愛情を疑ってしまっているのだと思います。本当にお子さんを傷つけてしまうような母親は、そうなることを心配したり、自分の行動が間違っているのではないかと省みることはありません。 実は、こうした強迫観念は子育て中のお母さまにみられることは少なくないのです。そして、同じような悩みを持つお母さま達に共通することは、母親としての責任意識が非常に強い点です。それは、「母親なのだから子供は大切に育てるべき」「母親は子どもを傷つけてはいけない」といった構えに繋がりがちです。「こうあるべき」と過度に自分に要求してしまうと、少しの失敗も許せなくなってしまいます。それが、Rさんが苛まれている不安を生んでしまうのです。

母親も人間です。時にイライラすることもあるでしょうし、失敗してしまうこともあるでしょう。それでも、我が子を大事に思う気持ちがあれば、それは必ずお子さんに伝わるものだと思います。母親はこの世の中で唯一無二の存在なのですから。

Rさんは、こんな状況を少しでも変えたいと書かれていました。これまで書いてきたように、不安自体を無くすことは出来ませんが、本当の願望を生かすことは出来るのではないでしょうか?お子さんはどんなもの、どんな食べ物、どのような遊びが好きなのでしょうか?Rさんは、お子さんとどんなことをして過ごしたいでしょうか?二度とない、お子さんとの「今」この時間こそを大切にして、強迫観念は頭の片隅にあったとしても、日々の生活の中でお子さんの笑顔が、そして共に笑い合える時間が少しでも増えるように、具体的な過ごし方を考えてみてください。必ず、想像上の不安はいつか流れ去っていくと思います。
(久保田幹子)

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