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症状別アドバイス集

強迫神経症の部屋

「長く続く対人緊張」 '24.07 

Yさんは、「私の悩みは、対人恐怖かと思います。思い返せば20年以上前、高校生の頃から始まっていたのだと思います」と、人と食事をするとき、複数の人がいる場で話をしなければならないときなどのつらさを書き込まれています。

対人恐怖、社交不安症の悩みは森田療法で長く対応されてきました。フォーラムや専門医アドバイスでも、同じ悩みを持つ先輩方の書き込みや取り組むためのアドバイスがたくさん見つけられると思います。参考にしてください。

今は緊張する自分を変えないと、今の自分ではとてもやっていけない、と考えてしまっているのではないかと思います。けれども、今の自分、あるがままの自分で取り組めること、手のつけられることは実はたくさんあります。人と接する場面で感じる緊張も、いたたまれなさや劣等感など、いわゆるネガティブな感情も、人が生きる上での自然な、大切なご自身の感情なのです。自然な感情を「あってはならない」とねじ伏せようとすると、感情が流れなくなり、がんじがらめになってしまいます。今の自分、あるがままの自分で、できることから手を付けていきましょう。友人のランチでも、まずはその場にいる、お料理を見る、話を聞く、というところから始めてみましょう。何か一つでも発見があれば「しめたもの」です。

そして今は対人緊張を克服しなければ、と人と関わることにとらわれすぎているところもあるかもしれません。人と関わることに限らず、好きなこと、やるべきこと、手が付けられること、などでご自身の生活をふくらませていってください。

書き込みを読みますと、体がふるえたり硬直してしまったりと、身体の緊張も強い様子。軽い散歩や園芸など、五感に働きかけてくれる作業を取り入れるのも良いでしょう。散歩のときにも、目に入る植物や匂いなど、五感で感じることを大切に感じ取ってください。自然は味方をしてくれます。
(塩路恵理子)

「加害恐怖に対する森田療法」 '24.06 

R様、症状で辛そうですね。「自分の唾を飲み込む音が、他人に聞こえてしまって不快にさせているのではないか」との不安でいらっしゃるので、従来は加害恐怖と呼ばれた診断名です。

米国DSM-5診断基準ですと強迫症(強迫性障害)、森田療法の創設者・森田正馬の分類で言うと、強迫観念症に当たると思います。森田は強迫観念症、普通神経質、発作性神経症を「とらわれ」の病理ととらえ「神経質」と定義し、森田療法が有効であると説きました。

森田の言う「神経質」とは状態像、症状の成立する心理機制、神経質性格を包括していました。神経質性格とは、几帳面・完全主義・負けず嫌いといった強迫性、強力性の面と、内向的・神経質・受身といった内向性、弱力性の両面を持つ性格を指します。

森田は認知的プロセスを症状への「とらわれ」の機制が働いていると説明しました。「とらわれ」の機制とは「精神交互作用」と「思想の矛盾」に分けられます。精神交互作用は、注意と感覚が悪循環的に作用して症状が発展する機制です。思想の矛盾とは、あってよい感情をなきものとして知性で排除しようとしてしまう姿勢を指します。色々あって自然な物を不自然に排除しようと思うと悪循環に陥っていると森田療法では理解します。

神経質性格を基盤に症状へ「とらわれ」ている患者に対して、当然あってよい不安を排除しようとせずに、不安をそのままにして不安の裏にある生の欲望を建設的な行動に生かすことを治療目標に据えます。これを端的に表した言葉が、『あるがまま』です。ただ「『あるがまま』でなければ」と構えるのではなく、不安を抱えつつ建設的に行動していくプロセスが大事です。

医学的な診断をされていないようでしたら、例えばメンタルヘルス岡本記念財団HPの森田療法医療機関で近くの病院を探されて受診するもの一つの方法です:https://www.mental-health.org/medical.html。ご参考にしていただけると幸いです。
(舘野歩)

「好きなほど怖くなります」 '24.05 

Oさん、はじめまして。東京慈恵会医科大学附属第三病院精神神経科の半田と申します。

大切な人を自分が傷つけてしまうのではないかと想像すると、とても怖いですね。どうしてそんなひどいことを考えてしまうんだろうと、自分が信じられなくなります。ですが、そういった想像をすることは、じつは誰にでもあることなんです。たとえば、強迫観念が気になりだしたきっかけの映画にしても(観たことがないのであくまで一般論として受け取っていただきたいのですが)、心のどこかで同じように「大切な人を自分が傷つけてしまうのではないか」と恐れている人が多いからこそ、エンターテイメントとして成立しているのだと思います。

ただ、内容は誰しもが想像するものだとしても、その怖さはきっとすごく強いのだと思います。その理由の一つは、すでにお書きになっているように「大好き・絶対失いたくないがゆえにこのような感情は出て来るもの」だからです。そういった想像が今まで気になることがなかったのであれば、それはお子さんのことが今まで人生で出会った誰よりも飛び抜けて大好きだからなのでしょう。それはとても大切な感情だと思います。

もう一つの可能性は、産後のうつ症状の影響です。もともと不安になりやすい性質があったとしても折り合いをつけて生活していたのが、うつ病が重なったことで不安が非常に高まり、耐えがたくなっているケースもあります。その場合、うつ症状の程度・時期によっては過ごし方も変わってきますので、認知行動療法や森田療法などのカウンセリングを始めるのは、主治医の先生とよくご相談いただいてからの方がいいでしょう。

Oさんがお子さんとほどよい距離感でのんびりと過ごせるようになることを祈っております。
(半田航平)

「何のための手洗いなのかを振り返ってみる」 '24.04 

Mさんは、人間関係をきっかけにうつ状態になり、落ち込んだ気持ちや不安などを変えたいと考えていた中で、触ると不安になる・落ち込むことから手洗いを繰り返すようになったと書かれています。その際には、気持ちをコントロールするために、〇〇が出来れば心が晴れるなどと願かけのようなことをしたり、不吉な数字の回数は洗わないようにしているそうです。しかしその一方で、周囲の目や思惑も気になり怖くなっているとのこと。不安を解消するために手洗いを始めたにもかかわらず、結局は次の不安が生まれており、辛い状況が続いてしまっていますね。書き込みには、高校時代に友達から嫌がらせをされて以降、自信喪失・人間不信に悩むようになったこと、友達と会う前には明るく話せるかと不安になり、納得がいくまで手洗いをしてしまう、とも綴られていました。これらを踏まえると、Mさんの手洗いは、不安をなくすためのおまじないになっており、その不安も不潔に対する不安というより、対人関係にまつわる不安の方が大きいようですね。つまり、汚れそのものを落とすために洗っているのではなく、ご自身の傷つきや、不安・落ち込みといった気分や、思い通りに出来ないことに対する後味の悪さを洗い流そうとしているように思います。

確かに、こうした嫌な気持ちは受け入れがたいものですが、それは果して洗うことで消えるものでしょうか。回数やおまじないで区切りをつけているかもしれませんが、本当の意味で解決になっていないことはMさん自身も感じていることと思います。

Mさんがそこまで他者の思惑や評価を恐れるのは、実は他者から受け入れられたいという気持ちがあるからではないでしょうか。Mさんは、高校時代のような傷つきを味わいたくないと、必死に気持ちを整えることにエネルギーを注いできたのだと思いますが、それでは肝心の相手(友達など)に注意が払えなくなってしまうのではないでしょうか?つまり、目の前の相手との関わりではなく、独り相撲になってしまう可能性はないだろうか、ということです。

もし友達と楽しい時間を過ごしたいと思うのであれば、相手の表情なども観察しながら、まずは相手の話に耳を傾けてみることが大事でしょう。その上で、気持ちが整わない中でも、Mさんが感じたこと、伝えたいことなどを言葉にしてみることです。自分を整えることよりも、その場、その場で起きていること、感じることに目を向けていきましょう。楽しい時間だったかどうかは、後でわかることです。ましてや、人間関係にシナリオはありません。人との関わりの中では、思いが通じる時もあれば、誤解が生まれることもあります。思いが通じあった時には素直に喜ぶことが大事でしょうし、誤解が生じた時には率直に伝えることがお互いの理解を深めることになります。こうしたやり取りの中で、少しずつMさんが求める交流も生まれるでしょうし、自分に対する信頼も育っていくのではないでしょうか。その頃には、おまじないの手洗いも不要になっていると思います。
(久保田幹子)

「会食恐怖と森田療法」 '24.03 

Aさんは、「社交不安(会食恐怖)の気があり、人と食事をする際に手が震えてしまう症状が出てしまいます」と会食恐怖のつらさを書き込まれています。

会食恐怖に悩む人には、もともと対人場面で緊張しやすい人や、他の場面では緊張しないのだけれど、人と食事をする場面では緊張や症状が現れてしまう人など、さまざまな人がいます。震えが気になったり、飲み込むことがうまくできないように感じたり、とにかくその場にいることがつらく感じたり、感じることも様々ですが、「人と食事をする場面」でつらくなることは共通しています。

フォーラムでは同じ症状で悩む先輩から「会食で一番の目的は、会話と食事なので、話を聞く、喋る、食事を味わう、その中のほんの少しでもできたら充分と前向きに評価することからかなと思います」というとても良いアドバイスが書き込まれています。

本当にその通りだと思います。その場に行ってみることができた、友達の顔を見られた、一つでも話を聞くことができた、などをまずは認めてあげましょう。そして少しずつでもその場にとどまる、飲み物に口を付けてみる、ほんの少しでも箸をつけてみる・・などに少しずつ取り組んでみましょう。このとき、「楽しめたかどうか」を急ぎすぎないことも大切です。

そして、会食以外の家や、学校・職場・・などの生活に目を向けていくことも忘れずに。

先輩の書き込みで、自分だけではないのだなと実感できることはとても心強いですね。
(塩路理恵子)

「強迫観念の正体」 '24.02 

Mさんは今年に入って神経症が急に悪化し、加害恐怖・鬱恐怖などに悩まされ、今度こそしっかり神経症を治さないといけないと思われているとのことです。

夜に恐怖がピークになった時に、よく不安を感じ続けてみましたね。その中で、恐怖がピークに達すると自然と緩んでいくことを実際に体験できたのは大きな財産ですね。

強迫観念は、この「恐怖にとらわれたときの不快感」をなくしたいと自ら焦り、もがく時に発生すると森田先生は述べられています(森田正馬全集第4巻より)。Mさんの例では「今日は恐怖にとらわれたときの不快感を感じずに一日を終われるかもしれない!」とか「また来たらどうしよう」と思った時に、強迫観念がより強まる、つまり、強迫観念を「感じること自体を避けよう」とする心の働きによって、逆に強迫観念が強まっていると言えます。うまくいっている時ほど「また強迫観念が来たらどうしよう」という思いが生じるのも、この「感じること自体を避け」ようとする流れと一貫しているのではないでしょうか。

目の前のことに心を込め、不安や観念となるべく戦わないように過ごしていこうとされているのはとても良いですね。不安な時は不安、うれしい時はうれしいというように、感情はその時の状況によって揺れ動くものです。不安や観念が起きないようにしようとすることで無理が生じてしまいます。嫌なものは嫌、好きなものは好き、普段から自分の率直な感情を具体的に感じるようにしてみてください。感じにくい感情や人に言いにくい感情があれば、それはなんだろうと目を向けてみてください。そうやって自分の率直な感情とのつながりを良くしていくことで、不愉快な感情ともより付き合いやすくなっていきます。
(矢野勝治)

「自分をまた信じられるようになる方法」 '24.01 

Jさんは他の車に傷をつけてしまうという不安や、ストーブ・電気の消し忘れの恐怖など加害恐怖的な症状が強くなり、仕事での支障も大きくなってきていると書かれておられます。最近、より急速に症状が広がり、苦しくなって来られているようですね。森田療法を行われている心療内科を受診することにされて、良かったです。

Jさんの何度も確認するほど心配になっている自覚はとても大切ですね。確認を何度しても不安が募り、確認回数が増えていくのが強迫症状のからくりです。頭の中での完全を求めれば求めるほど、目の前の事実や自分の感覚を信じられなくなっていってしまうのです。例えば、Jさんの書かれていた封筒の例でも、本来であれば、汚れていないか気になって何度も触ることで逆に汚してしまう可能性が高いですよね。

ですので、第一に、確認を2回で済ますように意識されているのはとても大事です。不安が解消したか否かで行動を決めるのではなく、回数(例えば2回確認したのだから確認を切り上げる)、または時間を物差しにして次の行動に移るようにしてください。そうやって○分確認したのだから大丈夫と自分に声掛けをし、不確かな自分の感覚をよりどころにして次の行動に移るプロセスを繰り返すことで、自分の感覚への自信を取り戻していくことができます。

第二に、ミスはできない、完璧にこなさなければ迷惑をかけてしまうという感覚がずいぶん強くあるようですね。小学校高学年で始まった嘔吐への恐怖も弱みを見せられない、完璧にしなければいけないという構えと関係していそうです。大きなミスや、それによって恥ずかしい思いをするような経験が過去にあったのでしょうか。どんなところから自分の恐れが来ているのか、自分の身に何が起きることを恐れているのかを良く見つめてみてください。自分の中にある完全を求めるプレッシャーが弱まると、そのままの自分でいやすくなると思います。

最後に、やりたいことがいろいろあるのはとてもいいですね。おっしゃっていたように、不安を無視してまたは不安を感じながら趣味に没頭してください。楽しい上に、自分の感覚を取り戻すことにもつながるはずです。
(矢野勝治)

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