Nさんは新型コロナウイルス感染症にかかった後に、副鼻腔炎になったこともあり、顔の違和感・耳のかゆみなど身体の症状や不安感などで困っていらっしゃいます。症状には波があるようですが、家事は仕事はやってらっしゃるということです。ただ、やるべきことをやっていても、症状で疲れ果て、森田療法を学んでいてもなかなかとらわれている状態からは抜け出せていないようです。また、理由は分かりませんが、抗うつ薬や抗不安薬などは飲めず、漢方薬などの薬物療法も効果が乏しいようです。
長い間、不安感や身体症状が続いているということですので、本当に大変でしたね。ただ、その中でもなんとか良くしたいとNさんは森田療法を学び、家事や仕事などを頑張っていらっしゃったのですね。これは本当にすごいことだと思います。
一般に、不安や症状などをなんとか取り除こうとすると、不安感や症状に注意が向いてしまい、そのために感覚が鋭くなって、ますます不安や症状がひどくなり、とらわれた状態になってしまいます(これを森田療法では精神交互作用(注意と感覚の悪循環)といいます)。そのため、Nさんのように、家事や仕事などの作業をやっている中で、自然と注意が外に向かっていくと、とらわれから抜けやすくなります。ただ、ここで一つ注意点があります。それは、不安や症状をなくすために、意識的に「注意を外に向けよう」と行動すると、「今、不安や症状があるかどうか」というところをチェックしたくなり、結局は不安や症状に注意が向いてしまうという点です。つまり、行動するときの目的が「不安・症状をなくすこと」になってしまうと、またとらわれやすくなってしまうということです。
そのため、Nさんのお勧めしたいのが本来やりたいことに手をつけていくことです。Nさん、不安や症状がなかったら、やりたいことはなんでしょう?本来はどういう生活を送っていきたいのでしょう?不安や症状が強いときは「やりたいこと」が見えなくなってしまいがちですが、本来、不安の裏には「~したい」という欲求があるものです。不安や症状はそのままに、この欲求に目を向けて、少しずつ手をつけていってみてはどうでしょうか。
これだけ、なんとかしたいと思っていらっしゃって、苦しい中でも家事や仕事をやっているNさんにはエネルギーがあるはずです。このエネルギーを是非とも、本来のやりたいこと、に向けていってくださいね。応援しています。
(谷井一夫)
Yさんは不眠へのとらわれについてご相談されていました。体験フォーラムでのやり取りを通して、自分の気持ち(自分が何を感じるか)をコントロールできないのと同様、気持ちが揺れることもコントロールできないことに気づかれたようです。一番大切なところですね。
また、Yさんは不眠の時の苦しさを味わいたくないという思いがとても強く、辛い状況に再び陥ることを避けようとして、不眠チェッカーのようになられていた。元々不妊から不眠が始まったということでした。でも子宝を得られたと書かれています。本当によかったですね。そして、今は不眠をめぐる心配はあっても、仕事も家事、子育ても休まずやっていると書かれています。素晴らしいことです。自分が割いているこころのエネルギーの割合についてですが、願っていたお子さんが生まれて、得られた先の今どうなっていますか。願っていたようなお子さんとの時間を持てていますか。神経質な傾向が強い方は、手に入れるとそのことはそっちのけにしてしまって、まだ足りていないと自分が思うことに神経を集中させてしまうことがよくあるので気を付けてください。自分ができていることに目を注ぎましょう。そして、目の前にある大切なものにエネルギーを注ぎましょう。
Yさんは疑問を体験フォーラムに投稿されて、そこで周りのメンバーの返答に気づきを得たり、わからないことはまた問いながら少しずつ自分の心のからくりと苦しみの関係に気づかれていき、最後は発見会にも参加することにされたようです。困ったときにはひとりで抱え込まずに相談することが神経質の苦しみから抜け出すのにとても必要だと思います。
1:自分の気持ちも気持ちの揺れもコントロールすることはできない。何か引っかかることがあったら、今「○○に引っかかってるな」と認識する。もし余裕があったら、なぜこのことがこんなに引っかかるんだろうと、見つめてみる。
2:目の前の今に集中する。
3:自分一人で何とかしようとするのではなく、周りに相談する。頼る。
(矢野勝治)