Aさん。こんにちは。東京慈恵会医科大学附属第三病院精神神経科の半田と申します。
眠れないと、焦りますよね。「健康のためには最低○時間睡眠をとらなきゃ」なんて思いはじめると、寝ようと意識するあまり、なんだかかえって目が冴えてくる。また、暗い中でじっと目をつむっていると、動悸が気になったり、「あれ、呼吸って、どうやるんだっけ…?」なんてヘンなことを考えたりして、とても不安になりますね。
人間、がんばって寝ることはできません。反対に、「今日は徹夜するぞ!」と気合を入れた日に限って、強烈な眠気に襲われたりすることもあるくらいです。それでもがんばって暗闇の中でじっとしていると、ドキドキしたり息苦しくなってきたりが気になってきますので、ここは一旦ギブアップして、眠気の方からやってきてくれるのを待ってみましょう。布団の中でじっとしている必要はありません。スマホやパソコンの明るい画面は要注意ですが、薄暗い照明で本を読んでみたり、音楽やラジオを聴いてみたりして、ゆったり過ごしてみるといいでしょう。
また、なぜ「眠らないといけない」と焦っているのか、その気持ちに立ち返ってみるとよいでしょう。たとえば、冒頭に挙げたように健康のために充分な睡眠をとりたいと思っている方の場合。睡眠不足だと絶対に健康になれないわけではないですし、睡眠だけが健康で過ごすために必要なことではないですね。夜は眠れなかったけれど、朝ごはんはちゃんと食べようとか、日中しっかり運動しようとか、健康のためにできることは色々あります。
その点で、お返事に書かれているように「日中の過ごし方」に目を向けられていることはとてもすばらしい気づきだと思います。眠ることばかりに狭まってしまっていた視野を広げて、生活全体が豊かになっていくといいのではないかと思います。
(半田航平)
「怖さの中でお子さんのためにできることを」 '23.01
Mさんはお子さんがアナフィラキシーを起こしてしまい、病院を受診し幸いにもお子さんは回復されたようですが、その後“同じことが起こったらどうしよう“という不安のうずに巻き込まれ、アレルギー症状が出ている時を思い出して怖くなったりされているとのことですね。
本当に驚かれたことと思います。そんな中でもすぐに対応されたことで、入院にも至らず、お子さんは回復されているとのことで安堵致しました。他の方もおっしゃっているように、今の不安や怖さが強いのは、お子さんを大事に思う気持ちがそれだけ強いからこそであり、自然なものです。ただ、おうちに帰られてからの行動はお子さんの健康を思う気持ちとは、ちぐはぐになっていらっしゃるように思います。育ち盛りのお子さんに、自分が怖いからと栄養を取らせないのは、却ってお子さんの成長を妨げ、別の体調不良につながってしまいます。
お子さんの食事を用意されるときには、いろいろな気配りが必要なことと思います。完全な子育てもなければ、人間なのでうっかりすることもあるのは当然のことです。その中で、今の怖さをしっかり感じたほうが、うっかりミスは防げます。不安や怖さがあるからこそ、アレルギー源が入っていないかをよく確かめられます。アレルギー除去食でいかにおいしいものを作ってあげるか、食事以外でも楽しく一緒に遊ぶように工夫するなど、お子さんのためにできることを考えて、実行してあげてください。
今回ご自身も体調を崩されているとのことで、心配です。また、体調不良の時にはマイナスの感情を感じやすくなりますし、注意力も鈍ります。お子さんのためにも、まずは自分が元気でいることも大事です。だからこそ、ぜひご自身が一息つくことも取り入れてみてください。きっと周囲の方も心配されていると思いますので、ご主人やご実家など頼れるところは頼ってもよろしいかなと思います。他の方のアドバイスのように、家にこもらず外に出てみるなど行動の転換をすると、今の気持ちも自然と変わることもあると思います。
子育ては体力、気力を使う重労働ですし、ましてアレルギーにも気を配られるとなると、より大変なことだと推察します。そんな中、本当によく頑張っていらっしゃると思います。現状で不安や怖さなしにお子さんの世話をすることはできません。不安や怖さを無くそうと戦うのではなく、ぜひ不安や怖さを武器にしていってください。
(市川光)