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症状別アドバイス集

不安神経症の部屋

「もっとよくばりましょう」 '24.05 

Nさん、はじめまして。東京慈恵会医科大学附属第三病院精神神経科の半田と申します。

きっかけは、転職、手術、子育ての悩みが重なったことだったんですね。さらっと書かれていますが、一つずつ来たとしてもかなり心に負担のかかる悩みだったのではないかと思います。それがこれだけ同時に重なったのですから、それはとてもきつかったですね。ご自身の中では現状に不満でいっぱいかもしれませんが、むしろよくここまで乗り越えてこられたなと感心しながら拝見しておりました。お仕事も復帰され、お子さんも新しい環境に慣れてきて、働きながら(旦那さんからのサポートが足りない中で!)子育て・家事もされているのですから、本当によくがんばっていらっしゃるのだなということは、よく分かります。

そして、それだけの努力ができてしまうのは、お気づきになられているように、それだけ欲が深いからですね。「働きたいのです。それでいて、子どもと楽しむ時間も捨てたくないのです」。大いに結構だと思います。むしろ、もっとよくばっていいです。旦那さんに遠慮して、言いたいことを胸の内にしまいこんでいませんか?職場に対しても、しっかりと成果を出しているのだから、プライベートの時間と両立できるようもっと要求してもいいかもしれません。もちろん、言うは易しで、実際に仕事と家庭のバランスをとることは簡単なことではありません。ですが、よくばる気持ちを忘れずに、悩みながら時間をかけて試行錯誤していけば、きっとNさんらしい生き方が拓けてくると思います。
(半田航平)

「予期不安との付き合い方」 '24.04 

Mさんは長い間パニック発作に苦しまれ、現在は発作自体は出ていないものの、予期不安が続いており辛い状態と書かれていました。パニック障害の場合、このまま死んでしまうのではないか、といった強い恐怖に襲われるため、またあの苦しみがやってきたらどうしようと予期不安にさいなまれる人は少なくありません。Mさんも書かれているような「予期することのできない恐怖」であると同時に、そこで対応できないことへの不安、つまりコントロールを失う恐怖と言えます。それゆえ、必死に不安・恐怖を事前に避けようと身構えることになってしまいます。とはいえ、事前に全ての不安・恐怖を察知し、それを避けることは出来ません。万全を求め、不安・恐怖を必死に避けようとすればするほど、逆に少しの不安・身体の異変にも敏感になって、それを強めてしまうことになります。まさに安心を求めていたものが、逆の方向に働いてしまうわけですね。きっとMさんも、こうした悪循環(とらわれ)から抜け出そうと、必死に過ごされてきたのだと思います。

予期不安は、安全・安心を求めるがゆえに生じるものですから、それ自体をなくすことは困難です。ただ、もしかしたら~、とあれこれ悪い結果を想像し、実際以上に不安を大きくしているかもしれません。事実、不安なままに行動してみると、案外大丈夫だった、何とかなったという経験をした方も多いのです。そうした体験を積み重ねることによって、対応出来ないと思っていた頼りない自分を、少しずつ信じ、頼れるようになっていくのです。つまり、予期不安をなくすのではなく、不安になっても何とか対応できる自分を育てていくということです。

Mさんの場合、ご自身のパニック発作は急に発生するのではなく、精神が不安になり追い詰められた結果、逃げ場がなくなり発生すると書かれていました。では、その時にMさんが感じている不安とはどのような不安なのでしょうか?どうなることを心配されて追い詰められるのでしょうか。先に書いたように、パニック症の予期不安は、コントロールできないことへの不安と言えます。Mさんが不安になって追い詰められる時とは、目の前の不安材料を何とか解決しようともがいている時ではないでしょうか。確かに問題を解決しようとする姿勢は大切です。しかし直ぐに答えが出ないことまでも解決しようとすれば、逆に行き詰ってしまいます。すぐに解決できる(できそう)なことと、できないことをまずは分けてみましょう。そして直ぐに答えが出ないことは、一旦脇に置いて様子を見てみることです。そうすることで、追い詰められる感覚は緩和されるかもしれません。Mさんが恐れている不安とは、予期できるか否かの問題ではなく、そこからすぐに抜け出そうとするか否かの姿勢によって強まっているように思います。不安は、「~ありたい」という願望がある証です。不安の解決を急がず、そんな中でも自分が出来そうなことに手を出してみましょう。真向勝負ではなく、かわしていくような感覚でやってみると、違う出口が見つかるように思います。
(久保田幹子)

「「いつか死ぬんだ」という考えがこびりつくこと」 '24.03 

Gさんは、一カ月ほど前から急にいろいろなことが不安になるようになり、特に「いつか死ぬんだ」という考えが頭から離れず不安になることを書き込まれています。

命あるものはいずれ死を迎える、ということは生きとし生けるものの普遍的な真実であり、昔から偉大な哲学者も頭を悩ませてきたこと。

ひとは生活を送る中で、そのことを考えたり、背景に溶け込むようにあまり意識をせずに過ごせたりしているのでしょう。恐ろしさがまざまざと感じられているときには、「他の人はどうして平気な顔をして生活しているのだろう」とさえ感じられるかもしれません。「生きること」に対する思いが強い時期ほど、その不安は強く現れてくるものかもしれませんね。

森田先生自身も幼いころに近くのお寺で恐ろしい地獄絵を見てから、死の恐怖がこびりついて苦しんだことが知られています。

森田先生は「まず私自身の自覚について、一例を挙げてみれば、私にとっては死ということは、いかなる場合、いかなる条件にも、常に必ず絶対的に恐ろしいものである。私はたとえ私が百二十五歳まで生きたとしても、そのときに死が恐ろしくなくなることは、けっしてないということを予言できる。」とまで書かれています。そして、「死ぬのは恐ろしい」ということを明らかに知ってからは神経質の症状から離れる、けれども苦しんでいる最中には、それは「嘘のような法螺のような話」であることも理解されているのです。Gさんも「死ぬときに後悔したくない。それも重々承知しています。それでもいつか必ず来る死が怖くてたまらんのです。」と書かれていますね。

「楽しいことをしているはずなのに、『いつか死ぬんだ』という考えが頭にこびりついて・・」とのこと、なんとか動くことも続けておられるのですね。こうした悩みを持っているとき、「以前と同じように楽しめるべき」とするのは、自分に対する無理な注文になってしまいます。「楽しめたかどうか」を測りすぎず、そうした「〇〇をやった」という事実を認めていく(不安からスルーしてしまわない)ことを積み重ねましょう。

書き込みを読みますと、一カ月ほど前からの急な不安の一つとして死について考えからくる不安があるとのこと。心療内科でのお薬のことも書かれていますので、主治医の先生ともよくご相談しながら進めてください。
(塩路理恵子)

「デイケアやサポートサービスの利用も考えて」 '24.02 

Eさんはからだのだるさ、不安がなかなか取れずに辛いとのことです。またお仕事もできないためこれからの生活に不安だらけと書かれています。

Eさんには心身の両方を見てくださる主治医や、具体的に日常の生活について相談する相手はいらっしゃいますか。身体の不調がなぜ続いているのか、精神的なものというのはどのような状況から生じてきているのかを良く診てもらい、その診断のもとに、Eさんが体調と付きあいながら、どのように生活を立て直していったらよいかを相談できる場所が必要なように感じます。

日常生活の安定や社会復帰を目的とした通所型のリハビリテーション施設(精神科デイケア)もよいかもしれません。症状との付き合い方や生活リズムの改善の仕方、対人コミュニケーションの向上などその人の状況に合わせて計画を立て、その過程をサポートしてくれます。施設によって異なりますが、医師・作業療法士・精神保健福祉士・心理士・看護師などスタッフも多職種で構成されている場合が多いので、生活や症状のことも相談しやすく安心ではないかと思います。主治医や病院のソーシャルワーカー、または地域の精神保健センターで相談し、受けられるサービスやサポートを利用して自分の生活を組み立てることを考えてみてください。相談し、動き出してみると自分の気持ちや不安も違ってくるはずです。
(矢野勝治)

「突然の病気重症化不安」 '24.01 

Kさんは薬の副作用をきっかけに、強い不安と恐怖心に悩まされ、体重減少や無気力などうつ症状にも悩まされているとのことです。それだけ体重も減り、体力も落ちると、身体も頭も思うように動かず、本当にお辛いことだと思います。そんな中、簡単な家事と、毎日ウォーキングと外出を続けておられるのはとても大事なことですね。

森田先生は死への恐怖を持つ患者さんの治療についてこんな風に述べられています(『療法』第8章「神経質の療法」より)。「死を恐れるのは人情である。ただ発作の時はじっと耐えて必死になって恐れていれば良い。死は余(医者)に任せて置いて家族に大騒ぎをさせてはならない」。死は誰にとっても怖いものである。発作が起こって怖くなった時にはじっと耐えて恐れていること、人の助けを借りずに発作が経過するのを待つこと、容体を家人に訴えず、自分で抱えていくことが病気を軽快させるうえで極めて有効であるとしています。

一人で行動できるようになりたい、家族に迷惑をかけたくないと思われているKさんにとっては大きな指針になるのではないでしょうか。

一方で、それがあまりにも現在の状況で厳しく、ご本人ご家族の疲弊だけが増すようであれば、主治医の先生と相談されて、一旦入院治療を検討してもよいかと思います。身体が疲弊しきって落ち着かない状態で、いくら自分でやってみようと思っても難しいこともあるかもしれません。入院には勇気がいるかもしれませんが、身を任せて治療を受け、しっかり休息することで、心身ともに回復をすることは恐怖心と付き合う上でもとても大切な基礎になると思います。この場合の入院は森田先生のおっしゃる病気の専門家である医師にまずは治療を任せるというところにもつながると思います。

いずれにしても、これまでの検診の結果で病気が大きく悪化していない事実、そして、診断の結果を恐れるがゆえに緊張が高まり、身体の不調が増しているからくりを理解して、今どんな風に時間を過ごすことが自分と家族にとって一番後悔がないかを考えてみてください。
(矢野勝治)

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