(2011年7月9日 第122回心の健康セミナー「不安とうつの時代の森田療法」の質疑・応答より)
第122回心の健康セミナー(抜粋) 「不安とうつの時代の森田療法Q&A」
森田療法では不安な気持ちというのは、感情(気分)と言ってもいいですが、これは取り除けない、と考えます。それを森田療法では、思うようにならないこの感情は自然なものと考えますから、取り除けないし、また、取り除きたいという気持ちも自然であり、全て自然のありようと考えます。不安な気持ちを取り除くことも、取り除きたいと思う気持ちも、実は取り除けません。変えられるのは行動ということになります。
行動だけが自分の意志の通りになる可能性があります。質問者さんは、不安な気持ちが取り除けないと行動につながらないという考えに陥っておられますが、そういうふうに考えることをやめようという訳です。不安の気持ちを取り除けないと行動につながらない、そんなふうに考えるのをやめる。行動は不安な気持ちがあっても、取り除けなくても、取り除きたいという気持ちがあっても変えられるものなのです。
それでまず何をしたらいいのかといいますと、しなければならないことをする。これを目的本位といいます。でもそれがよくわからないということでしたら、生活の発見会をはじめとする、いろいろな森田療法の考えを実践した方々の意見を参考にされてはいかがでしょうか。自分なりに理解してやってきた人たちの本位は、他人のために役に立つことをするということだと書いておられます。その目的のある行動というものが見つからなければ、まずは他人のために役に立つことをやってみるということが大事なように思います。
財団のHP(森田療法医療機関)をご参照ください。
お気持ちはわかりますが、しかし、その心を治すとか、心を進歩させるということを、森田療法や行動療法などもそうですが、それを治療目的にしていません。行動は治せる、行動だけが変えられると考えるのですが、これをついつい不安をなくすにはどうしたらいいか、とか、心を治す、心を進歩させるには、というふうに考えてしまいがちです。心は見えない、そんなものあてにならない、天候と同じなのです。ですから、治せるのは思いやりでもなんでもなくて、行動です。生活とは日々の行動です。それをどうしたら少しでも楽にできるか?
心とか精神のありようとか不安とかそういうものばかりを治すというふうに考えていますと、どうも私たちは落とし穴に入りやすいようです。そこのところは注意しておきたいと思います。
パニック障害の養生について、私が外来でやっているのは、次の(1)~(5)のことです。
(1)まず一つは日記をつけていただきます。
これはとても大事です。森田療法でも日記はよく使います。これは何が必要か、セルフモニタリングをしていただきます。いつ、どこで、どういう時に、例えばパニック発作が起きたか…ということをずっと記録していきます。普通の日記と同じです。自分でモリタリングしていく。どこでそういう発作が起りやすいか。予期不安が起こりやすいか、誘因きっかけを見つけて行きます。そういうきっかけがあるところは、いくつかの手段、予防手段を取ることができます。
(2)大事なことは、予期不安とパニックの発作は別だというです。
お薬が少し違います。
パニック発作を起こさないようにするのはSSRIという抑制抗うつ薬です。予期不安の方は、これもよく使われているエンゾチアゼピンタイプのお薬です。たいがいSSRIでパニック発作は起きなくなります。
予期不安が何となく発作のような感じがして怖い、という方にはパニック日記をつけていただきます。予期不安とパニック発作と分けていうようにしてもらいます。予期不安の起きやすい場所、起きやすい時というのを自分でみつけていただきます。それによって薬の飲み方も工夫していただき、減薬する時は、徐々に減薬し、飲み方も、例えば、一日3回を一日2回に減らします。朝夕とか朝昼とかにしてみて、それから一日1回に減らします。会社などに行く前に一日1回朝飲むという人が多いです。仕事がない週末はオフにするという感じでやっていきます。だんだん良くなってきますと、忙しくなり、飲み忘れるようになります。飲み忘れていますと、出先などで急に嫌な予感がした。そう言えば今日は薬を飲んでなかった、というようなことが日記をつけているとよくわかるということがあります。誘因場所がわかれば、だんだん減らしてくるとパニックが起きそうな予期不安が高まりそうな時に、薬を頓用してもらうという方法があります。
(3)もう一つ私が指導しているのはリラクゼーションの方法です。
リラクゼーションはいつどこでも自分がリラックスできるようにします。これは腹式呼吸法です。一日1回、毎日15分間、寝る前に練習してください。寝る前に仰向けになって足を立てて天井を向いて腹式呼吸を30分位、これを毎日やってください。そのうちに何時でも自分が腹式呼吸を職場や外出先などで出来るように練習していただきます。
リラクゼーションの方法としては、ヨガなどが役に立ちます。アロマなどの体感医療や専門的な訓練では自律訓練法というものもあります。腹式呼吸で薬を飲まずに発作を抑えられたという体験があると、自分はできると自信がついて、薬に頼らなくても良くなります。減薬していきたいが上手くいかないという人は
パニック日記をつけながら、その状況をみつけていくということと、リラクゼーション腹式呼吸法を身につけていただくことが重要です。
(4)食事関係では、日々の養生の中での注意点ですが、パニックに発作が起きやすい人ですと、カフェインなどが発作を引き起こすひきがねになっていることもありますので、できるだけ控えていただく方がいいと思います。
カフェインは風邪薬などにも含まれていますから、風邪薬の中に入っていた成分が、発作を誘発したということもあるようです。一般的に体力が落ちている時は発作が起きやすいので、養生なさっている間はアルコールは控えていただく方がいいと思います。
(5)外出できない方の場合、これは難しいです。
往診でのカウンセリングというのがあります。一般的には、パニックがあるとそのために外出できない、ますます症状は悪くなります。逃げれば逃げるほど悪くなるというのが、パニック障害です。
ですから、エクスポージャーという、森田療法で言う「恐怖突入」が、どうしても必要になります。それをしなければパニック障害、特に広場恐怖というのはなくなりません。なんとかエクスポージャーをすることが必要です。そのために少しでもエクスポージャーが出来るようにと、お薬を使います。薬は嫌だ、外出できないから処方してもらえずお薬が飲めない、ということがあるかもしれないですが、その時には地域の保健福祉センターなどの保健師さんに訪問依頼をすることもできます。