薬物療法への接し方(症例と解説)

欲望の発揮と生き方の修正
その後、Aさんの行動は積極的になってきました。常に不安に襲われるのですが、それを受けとめ、不安が変化、流動することを体験できるようになりました。次第に不安以外の自然な感情を感じ、それを日記に記載するようになりました。特に家族との感情的な交流が、今までのような不安・恐怖の記載に代わって書かれるようになりました。
そしてAさんは会社に復帰することを自ら決断しました。自分の健康な欲望の発見であり、発揮です。それをわたくしは支持し、その発揮を励ましました。電車に乗ること、人に会うこと、会社で机に向かって仕事をすること、全てが不安でありました。しかしその不安を一つ一つ受けとめ、乗り越えていったのです。次第に仕事をする喜びを感じるようになったが、以前のような仕事人間にはなりたくないようでした。Aさんは不安を克服する過程で、家族との感情的交流の大切さなどを知ったと日記に記載します。服薬も次第に減量し、服薬を止めるとともに、治療も終結となりました。約10ヵ月の治療期間です。
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