2025年12月

12月1日

われわれは、自分の感情を否定し抑圧することは不可能であるが、感情の自然にしたがって、理知をもってこれを調節する工夫をすれば楽に心の調和が保たれるようになる。森田正馬

12月2日

「負けおしみ」の人は、物の見界(みさかい)なしに、なんでも、かでも、負けるくやしさがいけないので、一切勝負ができないから、何ごとにも、上達ということは、できないのであります。森田正馬

12月3日

われわれは、見るもの・聞くもの何かにつけて、ちょっと心をとめていれば、必ず何かの「感じ」が起こる。かりそめにも、これにちょっと手を出しさえすれば、そこに感じが高まり、疑問や工夫が起こって、興味がわく。これを押し進めていけば、そこにいくらでも、進歩がある。森田正馬

12月4日

人生の恐怖の最大のものは、死の恐怖であるが、(略)、人生の欲望に乗りきり、時間も物も労力もすべてをむだにせず、何ごとにも能率を上げるということに、絶えず工夫をするというふうになれば、自ら精神緊張して、死の恐怖などは影を潜めて、意識からなくなるのであります。森田正馬

12月5日

赤面恐怖は、優秀欲・支配欲・負けおしみ・勝ちたがりの反面でありまして、そのための劣等感や、恨みごと・過去の繰り言などに悩むものであります。したがって、その着眼点を恐怖の方ばかりに向けず、その欲望の方のみに向けさえすれば、心機一転、強迫観念は全快するのであります。森田正馬

12月6日

臆病と大胆、すなわち恐怖と欲望との関係は、常に互いに相正比例するもので、大胆が大きければ臆病も大きく、欲望が少なければ恐怖も乏しい。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」というのは、大きな欲望には、大きな恐怖を当然とするものであるということを意味するのである。森田正馬

12月7日

神経質の患者は、迷ってはならぬ、なんでも解決しなければならぬと考えるのが、第一の誤解の元である。僕の教え方は、迷うのは免れない、迷うのがわれわれの本当の心で、われわれは迷いながらにする。迷いながらに、信ずる人にまかせるというのである。森田正馬

12月8日

われわれの日常生活は、僕が精神の拮抗作用と名づけているように、心は常に、見るか見ないか、逃げるか逃げないか、机の上を片付けるか片付けないかというふうに、必ず反対の心が、闘っているものである。この闘いを煩悶とか強迫観念とかいうのである。森田正馬

12月9日

私の教えるとおり実行して、実際においては、たとえ最上にできたとしても、神経質の際限なき空想的な欲望は、その事実を正しく認識することができないで、「もっと楽に、スラスラできる法はないか」というふうに考えたがる癖があるから、いわゆる「迷いのうちの是非は、是非ともに非なり」であって果てしがないのである。森田正馬

12月10日

神経質は、その安全弁が鋭敏すぎて、疲労感や病の感じが強すぎて、その本人自身の感じのままに従ったときには、何ごとにも大事を取りすぎ、取越苦労が多すぎて手も足も出なくなる。森田正馬

12月11日

強迫観念の定義は、自分の欲望、目的に対して当然起こる取越苦労を、取越苦労しないように、思わないようにとかいうふうに、自分の心を抑えつけようとするために、当然心に起こる葛藤の苦悩に対して名づけたものであります。すなわち自分の心配ごとに対して、これを心配しないようにとする心が強迫観念です。森田正馬

12月12日

「こうしなくてはならない」ということが、葛藤になり、抵抗になって、自然の心の流動を閉塞してしまうことになる。森田正馬

12月13日

対人恐怖は、いたずらに恥ずかしがらないように、大胆になるようにと、主義が強く、強情でいけない。ただ対人恐怖が全治して、心機一転した人は、その主義をまったく脱却して、純なる自分になって、私のこの話がよくわかる。森田正馬

12月14日

直そう(=あるべき正しい形へ直すこと)として、ますます苦しく、道徳恐怖の強迫観念にもなることがあるが、ただ自然の感じのままに、たとえ憎むような心があっても、会釈笑いもしたり、通り一遍の社交儀礼をしているうちに、自らいやな心も流れ去って、自然に朗らかになる。少しも難しい主義などを立てて、頑張り苦しむ必要はない。森田正馬

12月15日

「いやなものが好きになる」、「不潔が平気になりたい」(不潔恐怖)、「人前で恥ずかしくないようになりたい」(赤面恐怖)このように考えている間は、永久に強迫観念は、当然不治である。ただこれを思い捨てる、すなわち「嫌いなものは嫌い」「人前は恥ずかしいものである」と、事実そのままに見るとき、容易に嫌いは好きになり、人前も恥ずかしくなくなるのである。これが私のいわゆる「思想の矛盾」で、逆になる所以である。森田正馬

12月16日

火を冷たくし、死を恐ろしくないようにしようとかいうのを、「思想の矛盾」という。矛盾とはアベコベになることである。恐れをなくしようとすればするほど、かえってますます、アベコベに恐ろしくなる。森田正馬

12月17日

「恐ろしいことを恐ろしくなくしよう」「苦しいことを平気でやろう」とかいうことを、私は「思想の矛盾」と称し、不可能を可能にしようとすることで、ノレンと角力をとる(手ごたえのないこと、意味のないこと)ように、結局は奔命(ほんめい)に疲れるばかりであると申しております。森田正馬

12月18日

たとえば冬は寒い、心配ごとは苦しい、それを寒いと感じず、苦しいと思わないようにとすることは、白を黒と思い、曲り松を直松と見ようとするのと同様に不可能なことである。すなわち「思おうとする」と「思うことができぬ」とのいわゆる循環論理の際限ない心の葛藤になるから当然苦悩の極になり、眼も見えず、頭もボッとなることは当然のことであります。森田正馬

12月19日

そのよいとかいけないとかいう評価がいけない。その価値観がある間は、ゾルレン(ドイツ語:sollenで理想)すなわち、「そうしなければならぬ」という「思想の矛盾」が起こって、強迫観念の性質を帯びてくるようになる。森田正馬

12月20日

理屈を先に立てて、実行をそれにあてはめようとするときに、「思想の矛盾」になり、迷妄になり、事実を先に立てて、これを解説するときに、はじめてそこに真理が現れるのである。森田正馬

12月21日

「どうせ死ぬことは免れぬから、死の恐怖だけでも取りのけたい」と考えることがある。ちょっと面白い理屈のようであるが、実はまったく論理になっていない。「死は逃れられぬから、それで恐ろしい。もし逃れられるものなら、恐ろしいことはない。」これが正しい論理である。森田正馬

12月22日

自分の考え方で、事実の真相を曲げようとする、これが悪智です。「逃れられぬから、すなわち恐ろしい」という事実を恐ろしくないように考えようとするのが、悪智である。森田正馬

12月23日

自分の心の自然の発動に反抗し闘争することを、禅では、「一波を以って一波を消さんと欲す、千波万漂交々起こる」ということにたとえている。心に起こる雑念を押さえようとし、打ち消そうとすればするほど、ますます心の葛藤が激しくなるものである。私はこれを心の拮抗作用ということで説明している。森田正馬

12月24日

「苦痛を苦痛として受け入れるようにしよう」ということは、その「受け入れよう」と心がけることが「思想の矛盾」となって、その受け入れることがますます苦しくなる。普通の人は、平常「受け入れる」とか入れないとか、そんなことを考えているのではない。ただ苦痛は苦しみ、面白いことは喜んでいるだけである。森田正馬

12月25日

赤面恐怖の治りにくい患者は、この自覚を深めるという方面に、少しも心を用いず、子供、婆さん、課長、美人と、みな一様に、恥かしくなく、面の皮を厚張りにしたいとばかりに苦悩するからである。森田正馬

12月26日

無理な理屈で、われとわが心を、ため直そうとせずに、小児のようにただ恐れるままに恐れていさえすれば、たとえ、昼夜猫の声が聞こえるようなことがあっても、けっして二、三日とは続くものではありません。森田正馬

12月27日

不可能と可能との区別を研究せずに、こうありたいと、できないとの二つの間の循環論理になるから、繫驢桔(けろけつ:禅の教えにおいて、杭につながれた驢馬の状態を表す言葉です。この言葉は、悩みや不安から逃れようとするが、そのためにさらに縛られてしまうという意味)のように、いつまでも果てしなく行きづまることができないのである。森田正馬

12月28日

ただ苦しいものはそのまま苦しみ、恐ろしいものはそのまま恐れるというふうであれば、何も強迫観念にはならないで、心の自然の絶えざる変転のうちに自ら気がまぎれて忘れるようになるべきはずであります。森田正馬

12月29日

あなたはいろいろに心に思い出すことは、いかに苦しくともそのままにして、自分のなすべき義務をなし、またしたいことを思いきりやっていくよりほかありません。もしあなたが断然そうすることができれば、あなたの強迫観念も、霧の晴れるように、自分でも知らぬ間に、心がホガラカになるのです。森田正馬

12月30日

もしこの「本当の病よりは、心配なうちが安全である」ということに気がつけば、それが私の「自然に服従し、境遇に従順なれ」ということのはじめで、その病の治るきっかけとなるのであります。森田正馬

12月31日

鼻の先が見えて勉強の邪魔になる。余計なものが見える。普通の人には、こんなものは気にならないであろうと思うと、腹立たしく、苦しくなり、気も狂いそうになるというのである。人並でない・余計なことと考えるのが、その苦しみの出発点であり、考え方の間違いの元であります。森田正馬

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