その具体的治療として、
1)感情(不安)の特性に関する心理・教育、
2)治療者の悪循環への介入(2つのモデル)が挙げられます。
1)感情(不安)の特性に関する心理・教育
まず患者に不安の特性を繰り返し伝えることによって、その不安の対処を容易にし、 不安に直面化し、それを受けとめていけるように援助します。以下のようなことを伝
えていきます。
a)自己の感情に責任はない。しかし自己の行動にはある程度の責任があること。
b)感情を単一の原因に帰することはできない。したがってその原因探究の試みは、 意味がないこと。それよりも悪循環の打破が重要であること。
c)感情の方(法)則(森田)
森田は感情の方則として以下のものを挙げました。
簡略化して述べます。
1.感情は、そのままに放任し、あるいは自然発動のままに従えば、その経過は山型の曲線をなし、ついには消失する。
不安などの感情は自然のままに放置できれば、それは流動し、やがて消失する。この感情の流動・変化を体験するためには、感情をめぐる悪循環の打破、恐怖・不安への踏み込み(恐怖突入)が必要である。
2.感情はその感覚に慣れるに従い、その鋭さを失い、次第に感じなくなってくる。
2)不安に対する態度の変換 ―2つの治療モデルに基づいて―
1つは回避行動から健康的な行動、行為への変換です。これを行動体験モデルと呼びます。もう1つは自分の不安、恐怖をしっかりと見つめ、受けとめ、体験することです。これを感情体験モデル(受容モデル)と呼びます。わたくしはこれらのモデルを適宜提示しながら、患者の悪循環を打破し、クライエントの心理的、行動的変化を援助します。
パニック障害のクライエントにはわたくしはまず行動体験モデルを提示する。不安・ 恐怖を回避し、それを何とか軽減しようとしている人たちに今までと違った行動、行
為を提案するのです。原則的には、「まずは症状を持ちながら、現実の必要な行為を 行うこと」「その行為を通して何が得られるか、体験すること」を提案する。それに
は、当然恐怖に直面すること、恐怖そのものへ入り込むことが必要となります。そこ で患者には、不安・恐怖が当然起こるものと思い定めること、自分でその感情を操作
しようとしないことが助言されます。
つまり不安、恐怖などの苦痛に満ちた感情を排除しないで、それをむしろ自分で感じ取り、付き合うことを助言するのです(感情体験モデル)。さてこのようなモデルに基づいたパニック発作に対する介入が、どのような結果を生んだかは、Aさんをみていただければお分かりだと思います。