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■あるがまま(自然服従)■

  • 神経質の療法については、この思想の矛盾を打破すべきことが、一面の着眼点でなくてはならないことを知るべきである。
    それなら、この思想の矛盾は、どうしてこれを打破することができるか。

  • 一言でいえば、いたずらに人工的の拙策を放棄して、自然に服従すべしということである。人為的の工夫によって、随意に自己を支配しようとすることは、思うままにサイコロの目を出し、鴨川の水を上に押し流そうとするようなものである。思う通りにならないで、いたずらに煩悶を増し、力及ばないで、いたずらに苦痛にたえなくなるのは当然のことである。
    それなら自然とは何であるか。夏暑くて、冬の寒いのは自然である。暑さを感じないようにしたい。寒いと思わないようになりたいというのは、人為的であって、そのあるがままに服従し、これにたえるのが自然である。

  • ある時、ある僧が洞山禅師に、「寒暑到来、いかに回避せん」といって避暑、回寒の法を問うたことがある。すると洞山は、「無寒暑のところへ行けばよい」という。それはどんなことかと問えば、「寒の時はなんじを寒殺し、熱の時はなんじを熱殺せよ」と答えたとのことである。これは寒いときは、そのままに寒いさむいになりきり、暑いときはまた暑いことそのままになりきるという意味であって、その時にはじめて寒さも暑さも忘れてしまう。
    すなわち「心頭を滅却すれば火もまた涼し」ということになるのである。これが「自然に服従する」ということである。

  • 死を恐れ、不快をいとい、災いを悲しみ、思う通りにならないことを嘆くなど、すべて人の感情の自然であることは、ちょうど水が低きにつくと同様である。さらにまた、朝寝過ごしては頭が重く、食い過ぎをしては胃の不快を覚え、驚いて心悸亢進を起こすなどのようなことも、すべて自然の法則に支配されるところであって、因果の理法であることをまぬがれないのである。すなわち、いずれも自分の都合のよいようにばかりはできない。自然に服従するよりほかに仕方がない。

(「神経質の本態と療法」森田正馬・白揚社)

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