2.森田療法の基本概念
神経症の患者がもつ不安や恐怖心とは、つまるところ、死の不安や恐怖であり、有限の「生」を生きる人間にとって避けることのできない普遍的な感情です。そして何故そのような不安や恐怖を感じるかといえば、その裏にはより良く生きようとする人間本来の欲望(=生の欲望)が存在すると森田は考えたのです。
そして、そうであるなら病気に対する死の恐れの裏には、健康でありたいとする欲求があり、不安や死の恐怖は生の欲望と表裏一体のものであり、どちらも人間性の事実としてそのまま受容する事が人間本来の自然なあり方だと森田は考えたのです。
このような人間観に基づく森田療法の治療プロセスは「とらわれを打破し、自然に従った心のあり方」を獲得することがその核心となります。
すわなち、それにはまず「あるがまま」という言葉に集約されるように、不安や恐怖心など、心や身体にわく自然な感情や症状を排除しようとするのではなく、そのまま自然にしておくという態度を養うことです。
そのとき患者さんは、不安が自然に流れていく事実を体験的に気づくのです。
例えば不安発作のさなかでも、無理に脱出しようとせずに不安を抱えていると、不安はやがてピークを超えてしずまっていくものです。
ところで「あるがまま」とは単なるあきらめとは違う積極的な意味があります。
すなわち「あるがまま」とは、不安を抱きつつも、家事や仕事、勉強など今日一日のやるべき事をできるだけ建設的にに行う具体的な日々の営みを行うことを意味しています。
このようなプロセスによって目指す森田療法の治療目標は、症状に執着したあり方から脱却し、そのままの自分を受け入れて成長させること、そして生の欲望を発揮して自分らしい生き方を実現することでなのです。
「気軽に行こう、精神科」中村 敬 著/白揚社 より