
- 神経質において神経交互作用というのは、ある感覚に対して、注意を集中すれば、その感覚は鋭敏となり、この感覚鋭敏は、さらにますます注意をその方に固着させ、この感覚と注意とがあいまって交互に作用して、その感覚をますます強大にするという精神過程に対して名づけたものである。
- 神経質の症状には、たとえば次のようなものがある。
頭痛、立ちくらみ、神経がぼんやりする感じ、心悸亢進、注意散乱、不眠、胃部膨満感、伝染病に対する恐怖、衆人環視に対する羞恥の情、異性を見てふとみだらな連想を起こすなどの種々な感情、その他偶然に起こる不安発作、麻痺発作、疼痛発作あるいは神経痛様症状にいたるまでいろいろある。しかし、これは初めて症状が出はじめた時にさかのぼってよく調べれば、全て本来健康者でも平素体験する普通の感覚や感想で、疲労後や、寝過ごした時の頭痛感、飽食した時の胃部不快感、恋愛時の赤面、急病で死んだ人を見た時の恐怖にともなう悪寒、心悸亢進や、かけ足をした時にわき腹が引きつれることなど、だれもがよく経験することなのである。
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- ところが神経質者は、これを病的異常と考え、これに対する恐怖と予期感情とを起こして、精神交互作用により、その感覚をますます増進し、これに執着していつまでも長く症状を固定するようになるのである。
過度の勉強とか、頭部外傷とか、流行性感冒などの場合に起こる頭痛、不眠、めまいの感は実際に起こる症状であるが、神経質の感覚敏感は実際の過敏ではなくて、自らこれに執着して起こった自覚というにすぎない。だから、これは仮性感覚過敏である。
- そして、他の疾病や災害などに随伴して起こってくる神経質症状は、その病気が治り、事実は経過し、実際の症状はとっくになくなった後にも、主観的な感覚や感情の執着が残って、実際の病気と同じような症状を呈するものである。すでに精神交互作用によって、病状が発展してしまった後では、たとえば常習頭痛であっても、めまいであっても、強迫観念であっても、患者はちょうど夢の中で、その実在を信じているように、常に主観の内に閉じ込められ、これに対する絶え間ない苦悩に悩まされるようになる。
(「神経質の本態と療法」森田正馬・白揚社)
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