- 中国の森田療法
中国で本格的に森田療法が実施されるようになって約8年。
その現状をメンタルニュースNo.15「中国における『森田療法」より抜粋してご紹介します。
合わせて、普通神経質症を克服した陳長祥さんの体験記をこ一読ください。
温 泉 潤
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中国では、1990年から森田療法がしだいに実施されてきました。まず天津、北京、西安、山東および河北、江蘇省などの地域です。そして1996年6月までに、中国全国の紛30以上の省と市などの地域、62ヵ所の医療機関で実施されています。そのうち、24ヵ所は入院治療、37ヵ所は外来で森田療法を行なっています。主として総合病院、精神病院、医科大学の付属病院、精神衛生研究所、中国医学研究院、心理健康諮問センター、および大学病院などです。
また、これらのうちの24ヵ所の病院で森田療法を行なった結果、入院治療の改善率(良好改善を含む)は、それぞれ50〜100%、中程度成績(平均改善率に相当)は90%で、そうとう高い改善率を示しています。外来での改善率は65〜90%ぐらいになります。その平均値は70%です。
中国において森田療法で治療する神経質症の種類は多く、まず強迫神経症、対人恐怖、不安神経症、普通神経症などです。現在、各病院でその適応症を広げるように努めています。たとえば、うつ病、精神分裂症、各種の人格障害、ヒステリー症にも広がりつつあります。といっても森田療法実施の際には多くの病院で、その他の療法も併用しています。もっともよく併用されるのは認知療法、行動療法、精神分析法です。薬物療法も行なわれています。
なお、森田療法が中国ですんなり受け入れられた要因は、その理論と実践方法が、医者と患者ともによく理解できるからです。
- 発見会に似た学習組繊も誕生
いっぽう、1992年10月ごろ、ハルピン心理健康指導学校のなかに、はじめて森田心理訓練の講座が設けられました。学校式の森田心理訓練を始めたわけです。2年あまりで104人が訓練を受けました。学校式の森田心理訓練では、まず神経質症を、だれにでもありがちな神経質的な悩み、とします。そして神経質患者と精神科医師の関係を、教師と生徒としての関係とみなします。すなわち、ここでは森田療法を病院式から学校式に変え、学校で学ぶ心理素質の訓練として行なうわけです。
森田博士は「神経質(症)は病気ではない」といわれます。森田心理訓練ではこの理論を、生活実践のなかで自己のパーソナリティー(性格)を生かす方法として用います。つまり神経質症で悩んでいる人を、正常なパーソナリティー的人間として訓練のなかへ導きます。こうして、しだいに症状を軽減し消失させていくことによって、やがて各人の生活態度も徹底的に変わりました。
1990年以来、天津市は率先して、「生活と心理健康クラブ」を成立させました。つづいて西安市においても、日本の生活の発見会によく似た「生活発見会」を組織しました。おもな活動は、森田理論を基礎として集団で学習させることです。活動内容としては、講習、集団学習、懇談会、個人相談、講演会などです。おたがいに学びあい、助けあい、啓発しあって、神経質症の悩みを克服していきます。そして健康人としての生活をとり戻しました。しかし中国においてこのような組織は成立したばかりで、まだ普及の段階には至っていません。今後の大きな課題です。
- これからの展望と発展
1990年、日本森田療法代表団の訪中がきっかけとなり、森田療法が中国に導入されました。その後、メソタルヘルス岡本記念財団の支援のもとに、中国で第1回森田療法シンポジウムを開催し、また第3回国際日本森田療法学会を行ない、森田図書も続々と出版されました。同時に、中国の各地で相次ぎ森田療法の治療組織が生まれ、約60以上の医療機関と関係組織で森田療法やその教育が行なわれました。いわゆる、中国独特の発展と普及を遂げつつあります。いずれにせよ森田療法は、東洋文化を基盤とする心理治療に属しています。中国は伝統を重視する国です。森田理論の基本は、中国古代の老子・荘子の哲学思想のなかに含まれていますので、中国の人には受け入れやすいのものでした。ゆえに速やかに、中国で森田療法が進展することができたのです。
なによりも中国は、世界で人口がもっとも多い国です。また神経質症の種類も多いといえます。それに近年の、改革開放による経済発展にともない、競争の機会も生じて、ここ10年来、神経質症の患者の数も増えました。さらに増加の傾向をしめしています。
森田療法の理論は、多くの患者が習得しやすいうえ、実施のさいにも非常に経済的です。森田療法は中国においてますます発展すると信じています。
(Wen Quanrun/中国森田療法発展基金会秘書長・中園心理衛生協会理事)
- 「メンタルニュース」は、(財)メンタルヘルス岡本記念財団発行の広報紙です。
詳細は「生活の発見」平成10年10月号47頁を参照ください。