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症状別アドバイス集

不安神経症の部屋

「ピンチはチャンス」 '10.12

元来人前で緊張しやすいのにお子さんに関わる保護者会など色々な行事が多くてさぞかし大変かと存じます。
しかし人前で緊張する傾向はあってもそれまで支障がおありになったような記載がないということは、お子さんに関する行事の前までは何とかご自身なりに学校生活や社会生活を過ごされてきたのではと推察いたします。それはMさんの持っている力があったからではないかと思います。

この体験フォーラムでも、神経症症状を御自身なりに乗り越えた後、また別のライフサイクルの変化(例えば就職、結婚、出産など)に差し掛かった際に再発することは良く見受けられます。しかしそれを「ピンチ」ではなく、ご自身を見つめなおす「チャンス」と捉えなおしましょう。
森田先生は対人恐怖・書痙患者を入院治療した後将来の方針について、「君の人生は従来の会社に勤務する事と田舎に帰る事と、いずれが将来の発展に都合がよく、いずれが自分の希望とするところであるか」と尋ねました。さらに「もし自分の希望を捨てて、自分の人生を次第に退縮して行くならば、決して書痙も対人恐怖も治る時節は到来せぬのである。」と続けています。

Mさんの本当に望んでいることはなんでしょう?それは例えば、お子さんを思う気持ちが強いがために「保護者会できちんとした親でなければならない」「自己紹介では立派な内容を話したい」という思いが強まったから、その反動で対人緊張が強まったのではないでしょうか?
保護者みなさん完璧な親ばかりではないと思います。おっかなびっくりでもご自身なりに誠意を持って必要なことだけでも言えば良いくらいのお気持ちで保護者会へ出てみてはいかがでしょうか?
(舘野歩)

「症状試しにならない為に」 '10.11

SSさんはバスで具合が悪くなった事をきっかけに、「また具合が悪くなったらどうしよう」ということが頭から離れなくなり、その後、腹痛が起きるようになり急行の電車やバスに乗ることができなくなって困っていらっしゃいます。その後、SSさんは森田療法に関する本を読まれて、症状が軽くなったということでした。また、逃げ出せないような場所で、症状が多い気がするということも振り返っていらっしゃいます。

何かをする際に「具合が悪くなったらどうしよう」と不安になることを予期不安といいます。このような場合、一般に予期不安が高まるのは逃げ場のない場所であることが多いものです。それは「ここで具合が悪くなったらどうしよう」「他の人に迷惑をかけてしまう」などと考える事で、「今、自分は大丈夫か」と自分の状態ばかりを観察するようになり、余計に自律神経が乱れてしまうといった悪循環があるからなのです。逆に具合が悪くなっても何とか対処できるような場面(例えば家で一人でいる場合など)では症状が現れにくいものです。

このようなパニック様の症状の為に嫌な場面を避ければ避けるほど、悪循環は強くなって、更に苦手になってしまいます。しかし、SSさんは、実際は苦手な銀行や郵便局の窓口で手続きをすませてくる事ができました。しかも、「終わってみると何ともない」という実感も味わっています。これは、大切な体験となると思いますし、これからも苦手な場面を避けずに過ごしていただきたいと思います。ただ、一つだけ気をつけていただきたい事もあります。それは、行動する際に苦手な場面にチャレンジする事が目的にならないようにする事です。「早く克服しなくては」と焦って、用もないのに銀行に行ったり、やたらバスや電車に乗ったりするような「症状試し」の行動は「自分の症状が大丈夫かな?」と結局、自分の状態に注意がいってしまいがちだからです。大切なのはその時その時の目的を果たすことですから、生活で必要な場合には苦手な場面を避けないことで十分です。症状試しにならないように注意して、是非ともこのまま、チャレンジしていってくださいね。
(谷井一夫)

「"調和"の観点」 '10.10

Iさん、こんにちは。日々の日記を拝見しました。一生懸命、取り組んでいる様子が伝わってきます。文章から拝見しますとパニック障害に悩んでいらっしゃるのでしょうか?ここでは申し訳ございませんが、パニック障害と仮定させていただいてアドバイスをしたいと思います。まず次の2点をしっかりと認識してください。

(1)パニック発作はずっと続くものではなく、必ず時間の経過とともに消失します 
(2)パニック発作をなくそう、なくそうと思えば思うほどパニック発作は大きくなってしまいます(精神交互作用)

以上の2点をしっかりと留意した上で次の取り組みを心がけていきましょう。

つまりは、パニック発作をなくそうという「不安を排除する姿勢」から「不安を受けとめながら生きていく姿勢」への転換です。
そのためには、不安のあるなしに関わらず(不安を排除するのではなく、不安を受けとめながら)、生活に必要なこと、取り組んでみたいことに積極的に踏み込んでいくことが大事になってきます。「不安優先の生活(不安に支配される生活)」から「目的優先の生活(生の欲望にのっとってしなやかに自己実現を目指す生活)」への転換といって良いかもしれません。生の欲望にのってのびのびと生活していきましょう。こうした目的をもって、不安に左右されない姿勢を目的本位と言います。是非、不安に左右される気分本位ではなく、目的本位の姿勢を心がけていきましょう。こうした取り組みがIさんの現在の生活をさらに充実した形へと変化していくことは間違いありません。

Nさん、こんにちは。仕事に家事に、そして育児に一生懸命取り組んでいらっしゃいますね。文章のなかに”「極力無理をしない生活」から「健康人としての生活」へ行動を変化させることができた”と記載されています。人間には誰しも限界がありますから、自己の等身大の精神力、体力、能力をはるかに上回る課題を自らに課しますと確実につぶれてしまう可能性が高くなります。だからといって、極力無理をしない、出し惜しみの状態になりますとせっかく持っている力を出せない状態となってしまい大変勿体ないこととなります。大事なのは「調和」なのだと思います。Nさんは自己の等身大にあわせて、頑張りすぎるのでもなく、出し惜しみの状態でもない”ほど良い取り組み方”が出来ているのだと思います。是非、現在の「調和」のとれた姿勢で取り組んでいってください。

Hさん、こんにちは。ドイツに9カ月留学されていたのですね。異国の地での生活、勉強は様々な困難にぶつかり大変であったことと推察します。我々はどうしてもこうした困難を目の前にすると「困難なんかない方が良い」「あ〜もう駄目だ」と考えてしまうこと(決めつけてしまうこと)が多いように思います。そして困難にぶつかるたびに尻込みし、意気消沈してしまうことが多いのではないでしょうか。しかし、ここは「困難があってはならない」という姿勢ではなく(「かくあるべし」の姿勢ではなく)、「困難があって当たり前」という「背水の陣の心境」で臨むことが必要なのではないでしょうか。そうした姿勢であればいかなる困難も恐くなくなることでしょう。いや、困難を恐く感じても良いのです。恐いものは恐いで良いのです。あるがままです。目の前の事実に逆らうことは出来ません。我々は困難を恐いと感じたままに等身大の自己自身でコツコツと取り組んでいけば良いのです。また結果が上手にいく、いかないが問題なのではなく、いかに目の前の困難に一生懸命に取り組んだかが大事になってきます。失敗したら、その失敗は次の経験にいかしていけば良いのですから。文章を拝見しますと、留学体験が貴重なものであったことがうかがえます。是非、今後の生活にも生かしてのびのびと取り組んでいってください。
(川上正憲)

「健全な精神は健全な肉体に宿る」 '10.9

Yさん、こんにちは。10年前のMRIの造影剤検査の際、身体に変調が起ったことはとても災難でしたね。かなり動揺されたのではないかとお察しします。そして、このエピソードなどが切掛けとなって、病院や薬物への恐怖が出現したことは、当然の反応であると思います。しかし、Yさんは、森田療法とめぐり合って以降、不安や動悸が起っても、生活に欠かせない行動を避けないように実践されているようです。このことは、生活を停滞させないための大切な取り組みであると同時に、Yさんの心の強さの表れだと思っています。
ところで私は、これらの体験がYさんに単に強い不安を与えただけではないように思いました。

恐らく不安と同時に、健康であることの大切さを喚起させられたのではないでしょうか。健康診断など不安一杯でも、きちんと病院へ行くなど恐怖突入することは勿論大切なことですが、もう一方で日ごろからYさんが自身の体調を見直していく絶好のチャンスとして捉えていただければと思います。最近、私は外来の患者さん達に「健全な精神は健全な肉体に宿る」ということを話し、「体力を着けていくことが、体調回復の上でとても大切である」と説明するようにしています。というのも、入院森田療法で患者さんが「作業」を通じて生活を回復する中で、必ず体力の回復が認められるからです。ただし、「体力をつける」といっても、何も激しい運動をすることを意味するわけではありません。日中、歩くことなど動きのある生活を心がけ、規則的な生活リズムを送るようにしていくことが何と言っても重要と考えます。このように体調が整ってくることで、すこしずつ自分の身体に自信が宿るようになると思います。そして、この自信が、「不安があっても必要な行動をきちんとする」という森田療法の姿勢をより後押ししてくれるように思います。是非、身体への不安を、健康的な生活へ生かしていって欲しいと思いまず。頑張ってくださいね。
(樋之口潤一郎)

「不安や身体の症状との付き合い方」 '10.8

Yさんは緊張、頭痛、筋肉痛などの症状で困っています。全般性不安障害のようです。
人間の体は、朝方になると寝ているときの副交感神経優位の状態から覚醒し活動を始めるための交感神経優位に変わります。その切りかわりで症状を強く感じているのでしょう。

朝の症状を軽くするため就寝前に抗不安薬を内服されるのもよいかもしれません。しかし薬だけで不安や身体の症状を取り除こうとしてもうまくいきません。何とか症状を除去しようと努め、いくらを打ち消そうとしても次々いろいろなことが気になってしまいます。そこで、症状に対する姿勢を変化させることが大事になってきます。不安などは無理に打ち消さなくとも時間と共に変化していくことを思い出し、症状との闘いをやめて日々の生活の充実をはかるのです。不安のまま生活を外向的にしていくよう努めてみるとよいと思います。結果として身体症状も軽減してくるのではないでしょうか。
(矢野勝治)

「全般性不安障害と森田療法」 '10.7

Xさんは「老後、生活、病気、すべてのことが不安だらけでこの先長い人生を生きていくのがとてつもなく不安です」と書き込まれています。「症状がひどいときは生きているだけで不安になります」とのこと、さぞおつらいことでしょう。
「子供が将来まっとうな人間に育つのだろうか、家庭内暴力をするようになったらどうしよう」等の不安に駆られるというRさんももしかしたら全般性不安障害の状態なのかもしれませんね。

全般性不安障害は、状況に限られない、全般的な不安が持続することを特徴とします。漠然としたいろいろなことが不安の対象となります。たとえば健康に関する不安、事故に関する不安や地震や災害に対する恐れ、仕事に関するもの、将来に対する気がかり・・などが挙げられます。夫が病気や事故にあうのではないか、仕事で大変な失敗をするのではないか、子供が外出中に怪我をするのではないか、など身近な人に関する心配を持つ人も多いようです。筋緊張性の頭痛や身震いなど身体的な緊張が強いこと、頭のふらつきや発汗、めまいやみぞおちの不快などの自律神経症状を持つことも特徴的です。 全般性不安障害にはうつやパニック障害が併存する場合や、薬物療法が有効な場合がありますので、あまり症状が強い場合は一度受診をしてみてもいいかもしれません。

全般性不安障害に悩む人の中には、心配症でささいなことにもこだわりやすい、その一方で完璧主義で「かくあるべし」を持ちやすい、神経質傾向を持つひとも多いようです。
つまり、人一倍、安心で幸せな生活を求める気持ちが強い人が多いということ。 安心で安全な生活を求めればこそ、「もしもそれを脅かすことが起こったら」という不安が生まれてくるものですね。 そこで、アドバイス集にも何回か出ていることですが、現実的な不安と「もしもの不安」を分けて「もしもの不安」は置いておく、ということに取り組んでみましょう。
不安は、そのままにしておけば必ずピークを迎えて流れていくということを知っておいてください。不安をゼロにしようとすれば、不安にとらわれてしまいます。

森田先生も「不安常住」「不安定(心)即安定(心)」ということを言っていました。そこで「風や、寒さや絶えず変化することが日常の不安定の事実であり、これをその事実ありのままに見るときに安心があり、いやなこと苦しいことをも、ことさらにこれをいやと思わず苦しいと感じないようとするところに心の葛藤が起こり、私のいわゆる『思想の矛盾』が起こり、強迫観念が起こり不安心が起こる」と書かれています。
風に揺れるように不安と付き合いながら、少しずつ生活の動きに向かってください。
(塩路理恵子)

「日記を通して自分を知る」 '10.6

不安神経症のグループの書き込みを拝見してまず驚いたのは、日記の記載が多いことです。これまで日記をつけていなかった方も、他の方の日記に触発されて日記をつけ始めているようですね。しかし、それによって非常に多くの気づきや新しい体験を得られているようです。

Yさんはパニック障害に悩んでおられ、最近は大きな発作はないものの、息苦しさや倦怠感が続いており、外出も億劫とのことでした。当初は今後の治療にも迷いを感じていたと書かれていますが、同じ悩みを抱える仲間との出会いが新たな一歩に繋がったようですね。これはパニック障害に限ったことではありませんが、多くの人は自分の悩みが特別と考えがちであり、何とか今の状況を打開したいと思えば思うほど不安にとらわれていってしまうものです。そんな時に、同じ境遇の人のアドバイスはとても心強いと共に、『悩んでいるのは自分だけではない』という支えになるでしょう。また、他の人が頑張っている姿は、躊躇していた行動への後押しにもなります。実際、アドバイスをしたRさんがYさんの姿勢に触発されて美容院に行ったと報告されていました。パニック障害の場合、どうしても発作に対する予期不安から苦手な状況を避けてしまいがちなので、こうした相互作用は自分を変えるための原動力になるでしょう。このフォーラムの大きな利点として活用していただけたらと思います。

もう一つは、冒頭にも書いた「日記」の活用です。Yさんは次のように綴っています。「日記を始めたことで、私の心の中に『行動したい』という欲望が常にあります。なのでこんな日は(行動があまりなかった日)少しもったいなく思いました」と。それまでは、『不安』という気持ちにしか注意が向いていなかったものが、日記をつけることによって別の気持ちに気づくことが出来たということですね。まさに、日記で自分を振り返ることによって、不安の背後にある欲求が掘り起こされたのです。パニック障害の場合、万全な状態にしてから行動しよう考えがちなので、どうしても不安を無くすことが第一になってしまいますが、そうした姿勢を転換させるためには「〜したい」という欲求を知ることが必要なのです。欲求は、行動に向かう原動力になりますから・・。

また、日記は自分の生活を客観的に眺める機会にもなります。不安や症状がある中でどんなことが出来ているのかを改めて知ることになるかもしれませんし、これからやってみたいことが見えてくるかもしれません。Aさんも「日記をつけるようになってから、行動することが面白くなりました」と記しています。日記は、自分の軌跡でもあります。 目の前の不安だけに翻弄される生活から脱するために、そして何より自分が本当に望んでいることや、そこに近づくために今出来ることを探るためにも、日記を活用し、自分を眺めてみてください。
(久保田幹子)

「不安の薬をやめるとき」 '10.5

Kさんは、パニック発作とそれから発展した外出恐怖に悩んでおられるようですね。朝晩に安定剤(正確には抗不安薬といいます)を半年ほど服用し、その後はレキソタンという抗不安薬の頓用だけにしていた由、さらに最近は妊娠を希望されて休薬を決心したものの、外出恐怖が一時的に強まってしまったということでした。

またK2さんは、長年パニック障害に苦しまれ、最近はサインバルタという抗うつ薬を服用して安定していますが、「ここで一気に治してしまいたい」と思い、留学か入院森田療法を考えているとのことでした。何か思い切った手段を講じないと、なかなか服薬をやめることができないと感じていらっしゃることが言外に伝わってきます。

お二人のように薬物療法でパニック障害が改善した方が、なかなか薬を手放せずに苦労されるのは実にしばしば見受けられることです。一般に医師は抗うつ薬や抗不安薬を処方して病状が安定した後、ゆっくりと量を減らし時間をかけて中止することを目指します。減量の途中で一時的に不安や緊張が現れることはありますが、じきに慣れが生じるので,ある程度減らすことはそう難しくはありませんし、抗不安薬の場合は規則的服薬をやめた後、不安の強いときの頓服に切り替えることもよく行われます。けれども問題はそこから先にあるのです。

Kさんはレキソタンを持ち歩き、「発作が出そうなときはすぐに飲んでいた」ということですね。もしもそれがパニックの始まりならば、発作はふつう10分以内に頂点に達し、その後は徐々に鎮まってくるという性質があります。薬の効果が現れるのには10分以上かかりますから、実を言うと薬が効いてくるのは発作がおさまりかけた頃なのです。薬を飲まなくても自然に鎮まっていくのがパニック発作の特徴です。

ですからKさんの場合、パニックを薬で抑えているというよりは、発作の予期恐怖に対する「お守り」、つまりいざというときに対処の術があるという安心の効用(悪くいえば気休め)が主だったのでしょう。そのような「お守り」を手放せば、一時的に予期恐怖がつのるのもやむを得ないところです。そしてここが肝心な点ですが,予期恐怖は安全を求める気持ちの裏返しであり、あってはならない症状とは異なることをぜひご理解ください。そこで「お守り」代わりに家族を巻き込んだりして予期恐怖をやりくりするのではなく,怖い気持ちのまま、必要な行動に踏み込んでいって頂きたいのです。現に踏み込めば、タクシーにも一人で乗れたのでしたね。「なせばなる」のです!

またK2さんには、「急がば回れ」というアドバイスをさせてください.一気に休薬を図るより、外来森田療法を実施されているかかりつけの先生のご助言を得ながら、先ずは時間をかけて薬を減らしていくことをお勧めします。それでもうまくいかないようなら、入院森田療法について相談しましょう。パニック障害の方にとって臥褥をくぐり抜けることが回復に向かう大きな転機になることは、昔も今も変わらぬ事実ですから。
(中村敬)

「パニック発作とパニック障害の違い」 '10.4

Aさんへ、せっかく薬物療法で症状が改善したのにまた断薬により再発してしまいさぞ辛いことと存じます。

ここでパニック発作とパニック障害の違いを整理していきます。パニック発作とは、動悸や息切れといった自律神経症状が突然起こることを指します。パニック障害とは、パニック発作に以下の精神交互作用と予期不安が重なり日常生活に支障が出てきてしまう状態です。

精神交互作用とは、パニック発作が起きない間にも注意が身体へ集中することによりパニック発作自体が強まっているということを指します。予期不安により、パニック発作がまた起きるのではないかと思うことによりその不安に伴う身体の感覚をパニック発作と早合点して不安を募らせてしまいます。
薬物療法はパニック障害全てを取り除くのではなく、パニック発作の軽減に限定して考えます。

そしてパニック発作からパニック障害へ発展させないためにも森田療法の考え方が大事になってきます。パニック発作が起こるのではないかとの予期不安の裏側には自分が健康でありたい欲求が存在します。この予期不安を排除せずそのままにして今「〜したい」行動へ移るようにしてみましょう。つまりパニック発作がないときまで発作のことへ「とらわれて」しまうことが問題なわけです。パニック発作が起きた時に薬物療法で対処し、起こらぬ時はその時々に必要な行動をとっていくことが重要でしょう。

ただ症状に対する恐怖が強いとすぐにこのアドバイスから実行へ移すのは大変かもしれません。パニック発作に対して薬物療法をと書きましたが、この発作が起きてもピークが来ても必ず下がり落ち着く体験ができればパニック発作に対する薬の量を減らせる可能性はあります。少しずつパニック発作とうまく付き合えるようになることを願っております。
(舘野歩)

「"もしも…"の不安はおいておく」 '10.3

Rさんはトイレに行けない状況が怖くて生活範囲が狭くなってしまっていたり、緊張から吐き気やパニック発作のような症状がでたりして悩んでいらっしゃいます。

その中で、「もしも病気だったら…」と心配されて、病院受診を避けていらっしゃいますね。確かに「あなたは○○病です。」などと言われるのは怖い事です。また、ご家族様と共に楽しく生きていきたいという気持ちがあるからこそ、病気を恐れる事はとても自然な感情です。しかし、大切な事をお忘れになっていないでしょうか。病院というのは、病気なのかどうなのかを知る為に、あるいは病気であれば適切な治療を受ける為に行くものです。

健康で楽しく生きていきたいという気持ちがあるにもかかわらず、「もし病気だったら…」という不安ばかりにとらわれて、結果的に今のRさんは「病気を恐れて、病人の生活をしている」ことにならないでしょうか。そうだとすれば、それはとてももったいない事だと思います。これからも楽しく健康で生きていきたいという思いをかなえる為には、まずは今の症状が身体的なものからきているものなのか、精神的なものからきているものなのか、あるいは他の理由からなのか、を「知る」ことからはじまります。

神経症的なものからきている症状であれば、病院を受診するだけでもRさんの楽しく生きていきたいという思いに一歩近づくはずです。また、このホームページに沢山のアドバイスがありますので、是非とも参考にしてみてくださいね。
(谷井一夫)

「どのような人生(生き方)を歩んでいきたいですか?」 '10.2

Nさん、Yさん、Rさん、Kさん、こんにちは。

皆さんがパニック障害を患い、日々、悪戦苦闘されている様子が文章から切実に伝わってきます。そこで今回は、パニック障害の養生の上で大事なポイントを何点かお伝えしたいと思います。病気と上手に付き合っていくのは、何よりも正確に病気に関する知識を持つことが大事になります。

まず、皆さんが一番、恐怖と感じられる「パニック発作」ですが、このパニック発作で「生命の危険」が生じるということはないこと、また、この発作は必ず「終わりがある」ということを肝に銘じてください。「未来永劫、このパニック発作が続くということはない」という事実をしっかりと認識しましょう。つまりは時間がある程度経過すれば、必ずパニック発作はおさまるということです。

よってパニック発作が起きたときには、「待つ」ことが必要になるのです。別の言い方をすれば「時間を味方につける」と言って良いかもしれません。この「待つ」ことで必ずパニック発作は終わりを迎えるのです。その「待つ」ときに、場合によっては抗不安薬などを服用することも対処方法の1つとなりましょう。また、皆さんが悩まれるのは、「また発作が起きるのではないか」と心配になり(予期不安)、行動が回避的になってしまう点だと思います。なかにはこうした予期不安のために自宅に引きこもりがちな生活を送っている方も少なからずいらっしゃいます。こうした状態を解決していくにはどうしたら良いのでしょうか。

ただ、「急行列車に乗ることを訓練する、新幹線に乗ることを訓練する」とお題目を立ててもその実行はなかなか難しいと思います。大事なのは「目的をもった行動」をすることだと思います。「ただ単に恐怖の対象である急行電車に乗る」と目論んでもなかなか行動の原動力はわいてこないはずです。

しかし、「自分の好きな歌手のコンサートに行きたい」「観たい展覧会に行きたい」といった目的達成のためには急行電車に乗る必要がある、こうした場合はどうでしょうか?自分なりの目的達成のためであれば、一歩踏み込んだ行動をとる勇気が湧いてこないでしょうか。いかがでしょう。

「自分がこれからどんな生活を、どんな人生を送っていきたいか」、そうした視点を取り入れていきましょう。「パニック障害だから何も出来ないではなく、パニック障害であってもこんな風に人生を送っていきたい」、そうした人生に対する希望を大事に生活していただきたいと思います。  
(川上正憲)

「薬との付き合い方」 '10.1 

Uさんが薬について悩んでいます。

誰しも薬は出来れば飲みたくないものですね。最近では様々な薬が発売されており、症状が軽減するデータがあるのも事実です。一方で、残念ながら全ての人が薬でよくなるわけではありません。そしてUさんのように薬をやめたいのにやめられず困っている方もいます。森田療法における薬の考え方は、薬をやめたいと必死に頑張ってきた方に違う視点を与えてくれます。

大切なことは薬をどう位置づけるかです。症状を完全に除去しようとすると、どんどん薬が増えていき、いつまでも薬を減らせない状態に陥りかねません。森田療法では症状を取り去ることを目標にしません。薬は生活を立て直すための補助的な手段という位置づけにとどめて、治療における主体は患者さんの症状にとらわれない生活への取り組みであると考えます。森田療法において薬が減る人や飲まなくなる人は減らそうとして減っていくのではなく、「結果的に減っていた」「気付いたら薬なしでも生活できるようになっていた」と話す方が多い印象です。

Uさんは御自分で調節されているようですね。薬についてはかかりつけの先生とよく相談して下さい。薬の調節は先生にお任せして、御自分では生活の立て直しに専念されることをお勧めします。
(矢野勝治)

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